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今回は、「在職老齢年金」(60歳からの老齢厚生年金)についてレポートします。
このテーマは、年金の中でも複雑で難解なテーマと言えますが、少しでも理解の一助となれば幸いです。
さて、高年齢者雇用安定法が改正され、65歳未満の定年を定めている企業は、2006(H18)年4月1日以降、定年の引き上げや継続雇用等の措置を導入し、高年齢者の雇用確保措置を講じることが義務付けられました。
65歳まで現役で働くことになる一方、60歳~65歳までは老齢厚生年金が経過措置として支給されますが、給与の額によっては在職老齢年金の仕組みによって調整(支給停止)されることになります。
今回のレポートでは、「給与がいくらでれば、年金はいくら削られるのか?」という点についても解説していきたいと思います。
注) このレポートは 2008年10月7日現在 の法令に基づき作成されています。
65歳未満の老齢厚生年金は、
ときに支給されます。これを「特別支給の老齢厚生年金」ともいい、
があり、生年月日に応じ1.から2.へと段階的に切り替わり、最終的に廃止されます。
一般的に1階部分と呼ばれる「定額部分」から削られ、次に2階部分の「報酬比例部分」が削られます。
受給権者の生年月日 | 定額部分 (1階部分) |
報酬比例部分 (2階部分) |
---|---|---|
昭和16.4.2~昭和18.4.1 | 61歳~ | 60歳~ |
昭和18.4.2~昭和20.4.1 | 62歳~ | 60歳~ |
昭和20.4.2~昭和22.4.1 | 63歳~ | 60歳~ |
昭和22.4.2~昭和24.4.1 | 64歳~ | 60歳~ |
昭和24.4.2~昭和28.4.1 | 65歳~ | 60歳~ |
注) 生年月日は男性の場合で、女性は男性より5年遅れとなります。
そして、昭和36年4月2日以降生まれの方から60歳台前半の老齢厚生年金の給付は無くなり、老齢年金はすべて65歳から支給されることになります。
受給権者の生年月日 | 定額部分 (1階部分) |
報酬比例部分 (2階部分) |
---|---|---|
昭和28.4.2~昭和30.4.1 | 65歳~ | 61歳~ |
昭和30.4.2~昭和32.4.1 | 65歳~ | 62歳~ |
昭和32.4.2~昭和34.4.1 | 65歳~ | 63歳~ |
昭和34.4.2~昭和36.4.1 | 65歳~ | 64歳~ |
60歳以降も継続勤務し、厚生年金に加入している場合には、会社からもらえる給与の額に応じて年金額が調整(支給停止)されます。
これは、一般的に「在職カット」と呼ばれ、60歳台前半と後半では計算方法が多少異なり、60歳台前半の方が大きくカットされます。
60歳台前半の計算方法は次の通りです。
以下(イ)~(ニ)の計算式から出た額が1ヶ月当りの支給停止額です。
計算式(イ) | (総報酬月額相当額+基本月額-28万円)×1/2 |
---|---|
計算式(ロ) | (48万円+基本月額-28万円)×1/2+総報酬月額相当額-48万円 |
計算式(ハ) | 総報酬月額相当額×1/2 |
計算式(ニ) | (48万円×1/2)+(総報酬月額相当額-48万円) |
それでは、参考として設例を使って実際の計算例を見ていきましょう。
60歳~65歳までに受ける月給が、60歳時の月給より一定以上低下した場合に、その差額を雇用保険から補填される制度があります。
この制度を利用する場合、上記の在職老齢年金の仕組みに加えて、さらに老齢厚生年金は減額されることになります。
これらの仕組みは、高齢化社会の到来とともに、すぐに年金世代の仲間入りをするのではなく、一人でも多くの高齢者が現役で頑張って欲しいという意図があります。
また、わが国における「給付と負担のバランス」を考えても避けて通れない措置であると言えるでしょう。
それと補足ですが、上記の在職老齢年金の仕組みは、あくまで厚生年金保険に加入している場合に対象となります。
逆にいうと、60歳以降も継続勤務し会社から給与を受けていたとしても、厚生年金保険に加入していなければ調整の対象とはなりません。
定年の引き上げを行う事業主の方は、こういったことも考慮に入れ、60歳後の従業員の処遇を検討されてみてはいかがでしょうか…。
在職老齢年金に関する便利な早見表があります。
⇒ 「在職老齢年金早見表 – 60歳台前半」へ
⇒ 「在職老齢年金早見表 – 60歳台後半」へ
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