中薗総合労務事務所

   

人事労務のコンサルティング&アウトソーシング

   

兵庫県尼崎市西立花町3-4-1 パークビル201


   

TEL 06-6430-6318(営業時間:平日9:00~18:00)

 
 >
 >
雇用促進税制(H26・H28)
労働社会保険レポート!

今後、従業員を増やす予定がある、もしくは事業拡大の計画があるという事業主の方は「雇用促進税制」の適用を受けることをお勧めします。

雇用促進税制とは、適用年度中に雇用者数を5人以上(中小企業は2人以上)かつ10%以上増加させた場合に、法人税(個人事業主の場合は所得税)の税額控除が受けられる制度です。

現行では新規雇用者1人あたり40万円の税額控除が受けられますから、事業主にとっては大変お得な制度と言えるでしょう。

ただし、税額控除を受けるためには、あらかじめ「雇用促進計画」をハローワークに提出し、また雇用者数の増加のほかにも一定の要件を満たす必要があります。

以下に詳しく見ていきましょう。

<目次>

  1. 適用対象年度(延長措置見込みあり)
  2. 対象となる事業主の要件
  3. 適用を受けるための手順
  4. 提出書類
  5. 雇用促進税制の注意点

注) このレポートは 2014年1月6日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 適用対象年度

雇用促進税制の適用対象年度は次の通りです。

法人 平成25年4月1日から平成26年3月31日まで
個人事業主 平成26年1月1日から平成26年12月31日まで

事前申請が条件ですから、「なんだ、もう間に合わないじゃないか」と思われるかもしれません。

しかし現在、雇用の創出や経済成長に有効であるとして、厚生労働省が3年間の延長を検討しています。

制度が成立した平成23年度から多くの適用実績があり、平成25年度には控除税額が従来の20万円から40万円に引き上げられた経緯から考えても、延長措置がとられることは間違いないでしょう。

〔2016(H28)年4月1日の追加情報〕 適用期限が2年間延長されました!

雇用促進計画の提出手続き

2. 対象となる事業主の要件

雇用促進税制の適用対象となるには、事業主に次のような要件があります。

  1. 青色申告書を提出する事業主であること。
  2. 適用年度とその前事業年度に、事業主都合による離職者がいないこと。
    例えば、事業主都合で解雇した人の代わりに新規雇用するような場合は受けられません。
  3. 適用年度における給与等の支給額が、比較給与等支給額(※)以上であること。
    簡単に言えば、前年度より従業員の給与額を下げ、その浮いた分で新たに雇用者を増やしてはならないということです。
  4. 風俗営業等を営む事業主ではないこと。
    「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に定められている業種は適用が受けられません。

次のような式で計算します。

  • 比較給与等支給額
    =前事業年度の給与等の支給額+(前事業年度の給与等の支給額×雇用増加割合×30%)
  • 雇用増加割合
    =適用年度の雇用者増加数÷前事業年度末日の雇用者総数
  • 雇用者増加数は、適用年度末日と前事業年度末日の雇用者数の差となります。
    例えば平成25年3月31日に雇用者が4人で、平成26年3月31日に雇用者が7人だった場合、(7-4=3人)となります。

3. 適用を受けるための手順

雇用促進税制の適用を受けるための手順は次の通りです。

  1. 適用年度開始後2ヶ月以内に「雇用促進計画」を本社や本店を管轄するハローワークに提出
    ↓
  2. 適用年度終了後2ヶ月以内にハローワークが達成状況を確認
    ↓
  3. ハローワークが確認・押印した計画書の写しを確定申告時に税務署に提出

ハローワークでは、達成状況の確認におよそ2週間から1か月ほどかかります。
確定申告期限に間に合うよう、余裕を持って提出しましょう。


4. 提出書類

4-1. 計画開始(適用年度開始)時に必要な書類

雇用促進計画-1
本社や支社ごとに現在の雇用者数と目標増加数などを記したものです。
もちろん、実際の雇用が目標通りにいかなくても罰則等はありません。
雇用促進計画-2
本社や支社ごとに、期間中、どのような職種の人をどのような労働条件で、何月頃採用する予定か、求人の見込みを記したものです。
主たる事業所の雇用保険適用事業所番号が分かる書類

4-2. 計画終了(適用年度終了)時に必要な書類

雇用促進計画-1
計画開始時に押印された「雇用促進計画-1」に雇用増加数などの達成状況を追記したものです。
返信用封筒
ハローワークが確認押印後、書類の返送に用いる封筒です。

5. 雇用促進税制の注意点

雇用者数を算出するにあたり、雇用者とは雇用保険一般被保険者を指します。
以下の人は雇用者に含まれませんのでご注意ください。

  • 高年齢継続被保険者
    ※ 適用年度中に高年齢継続被保険者になった人(65歳に達した人)は雇用者として扱えます。
  • 短期雇用特例被保険者
  • 日雇労働被保険者
  • 役員
  • 役員の特殊関係者(親族や事実婚関係にある人、役員から生計の支援を受けている人など)

また、法人・個人ともに設立や解散の日を含む事業年度(合併による設立・解散を除く)、清算中の事業年度は適用がありません。

仮に計画期間中に合併・分割などの企業組織再編を行った場合、別途書類が必要になります。


あとがき

「1年目は投資、2年目はトントン、3年目でようやく利益になる」と言われるように、新規に雇用した人材が成長し、文字通り「人財」となるまでには時間がかかります。

新規雇用者に対する優遇措置を上手に活用し、事業の成長につなげましょう。

執筆 : 社会保険労務士 吉松 正人
監修 : 特定社会保険労務士 中薗 博章