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特定理由離職者
労働社会保険レポート!

今回は、雇用保険の「特定理由離職者」についてレポートします。

前回の「特定受給資格者」のレポートでは、労働者が離職(退職)する際、その離職理由(解雇・倒産など)によっては、一般の離職者に比べて優遇措置を受けられるようになることを解説しました。

今回は、期間の定めのある労働契約が更新されなかった場合や、やむを得ない理由によって離職した場合に優遇措置の対象となる「特定理由離職者」について解説します。

かつて、単に「自己都合」として扱われていたものでも、正当な理由があったりすると、この「特定理由離職者」に該当し、優遇措置を受けられる場合がありますので、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。

<目次>

  1. 特定理由離職者の範囲
  2. 特定理由離職者に該当するかの判断
  3. 優遇措置について
  4. 特定理由離職者の暫定措置期間
  5. 参考資料

注) このレポートは 2010年5月24日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 特定理由離職者の範囲

特定理由離職者とは期間の定めのある労働契約の期間が満了し労働契約が更新されなかったこと、その他やむを得ない理由により離職した者であり、具体的には次の事項に該当した者をいいます。

1-1. 労働契約が更新されなかったこと

労働契約が更新されなかった者がその労働契約の更新を希望したにもかかわらず、更新についての合意が成立せずに離職した場合に限ります。(契約期間は3年未満に限られ、3年以上ある場合の雇止めは特定受給資格者になります。)

注意

労働契約において、契約更新条項が「契約を更新する場合がある」など、契約の更新について明示はあるが確約まではない場合は特定理由離職者に該当する一方、当初から契約の更新がない旨が明示されている労働契約の場合は特定理由離職者に該当しません。


1-2. やむを得ない理由

  1. 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等
    〔持参資料例〕 医師の診断書 など
  2. 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
    〔持参資料例〕 受給期間延長通知書 など
  3. 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するため又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余議なくされた場合のように、家庭の事情が急変したこと
    〔持参資料例〕 所得税法に基づく扶養控除申告書 など
  4. 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったこと
    〔持参資料例〕 転勤辞令、住民票の写し など
  5. 結婚等に伴う通勤不可能又は困難となったこと
    〔持参資料例〕 住民票の写し
  6. 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した特定受給資格者に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の応募に応じて離職した者 等

2. 特定理由離職者に該当するかの判断

特定理由離職者に該当するかどうかの判断は持参する資料等に基づきハローワーク(公共職業安定所)が行います。

  • 離職証明書・離職票2
    まず「離職証明書」の離職理由欄(7欄)により事業主が主張する離職理由を確認した後、「離職票2」の離職理由欄(7欄)により離職者が主張する離職理由を確認し、両者の主張に相違がないか把握します。
  • 事実確認資料
    さらに、それぞれの主張を確認できる資料により事実確認を行いますので、離職理由を確認できる資料の持参を求められる場合があります。

3. 優遇措置について

特定理由離職者に該当すると一般の離職者に比べ失業給付(基本手当)の受給要件が緩和され、給付日数が優遇される場合がありますが、具体的には次のようになります。
(※ 特定受給資格者と同じ。)

3-1. 受給要件

基本手当の受給資格を得るのに必要な被保険者期間
□ 一般の離職者の場合 → 12ヶ月以上(離職日以前2年間)
□ 特定理由離職者の場合 → 6ヶ月以上(離職日以前1年間)

3-2. 給付日数

基本手当の給付日数は基本的には手厚くなりますが、離職時に45歳未満で被保険者期間1年以上5年未満の場合の給付日数は一般の離職者と同じ90日となり、一般の離職者と変わらないケースもありますのでご注意ください。

なお、最新情報は「ハローワークインターネットサービス」をご覧ください。


4. 特定理由離職者の暫定措置期間

特定理由離職者が特定受給資格者と同じ所定給付日数分の失業給付を受給できるのは離職の日が平成21年3月31日から平成24年3月31日までの間にある離職者に限られています。これは、この間については特定理由離職者を特定受給資格者とみなして扱うことにするという暫定措置をとっているからです。


5. 参考資料

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準

あとがき

特定受給資格者の場合は、会社の倒産や解雇等により離職を余儀なくされた方に対して、基本手当の受給要件が緩和されたり、所定給付日数が手厚くされたりしていましたが、特定理由離職者の場合は、非正規労働者のセーフティーネット強化が目的とされ、有期労働契約の更新を希望したにもかかわらず、更新されなかった離職者等を一般の離職者と区別して扱うというものです。

事業主としては、労働者を雇い入れる際に契約期間を定める場合は、契約更新の有無、また更新の判断基準を書面に明記しておく必要があります。

そして、契約期間の満了前に更新の有無を明確に伝え、合意しておくことが労使トラブルを未然に防ぐ意味でも大切となります。