中薗総合労務事務所

   

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特定受給資格者
労働社会保険レポート!

今回は、雇用保険の「特定受給資格者」についてレポートします。

従業員が離職(退職)する際、その理由によっては「特定受給資格者」として扱われる場合がありますが、この「特定受給資格者」に該当すると、一般の離職者に比べ失業給付(基本手当)を受ける際の受給要件が緩和されたり、給付日数が増えたりして優遇されることがあります。

したがって、離職者にとって離職理由は以前に増して重要と言え、この離職理由を巡って労使トラブルにまで発展するケースがあります。

労使トラブルを回避する意味においても、まずは「特定受給資格者」とはどのようなものか、正しく理解しておく必要がありますので、今回のレポートがその一助となれば幸いです。

<目次>

  1. 特定受給資格者の範囲
  2. 特定受給資格者に該当するかの判断
  3. 優遇措置について
  4. 参考資料

注) このレポートは 2010年5月9日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 特定受給資格者の範囲

特定受給資格者とは、倒産・解雇等により離職を余議なくされた者をいい、具体的には次の事項に該当したことにより離職した者をいいます。

1-1. 倒産

  1. 倒産(破産、民事再生、会社更生等の申立て、手形取引の停止等)
  2. 大量雇用変動(1ヶ月30人以上の離職)
  3. 事業所廃止(事業活動停止後、再開の見込みのない場合を含む)
  4. 事業所移転により、通勤が困難となった

1-2. 解雇

  1. 事業主側からの解雇(本人に重大な帰責事由がある場合を除く)
  2. 労働契約で明示された労働条件が事実と著しく相違した
  3. 賃金(退職金を除く)の3分の1超が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2ヶ月以上となった
  4. 賃金が85%未満に低下した(又は低下することとなった)
    ※ 当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限られます。
  5. 離職の直前3ヶ月間に連続して労働基準法に定める時間(各月45時間)を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、必要な防止措置を講じなかった
  6. 事業主が労働者の職種転換等に際して、職業生活の継続のための必要な配慮を行っていない
  7. 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなった
  8. 労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなった
  9. 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇、嫌がらせを受けた
  10. 事業主から直接若しくは間接に退職勧奨を受けた
    ※ 従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しません。
  11. 使用者の責めに帰すべき事由により休業が引き続き3ヶ月以上となった
  12. 事業所の業務が法令に違反した

2. 特定受給資格者に該当するかの判断

特定受給資格者に該当するかどうかの判断は、次の資料に基づきハローワーク(公共職業安定所)が行います。

  • 離職証明書・離職票2
    まず「離職証明書」の離職理由欄(7欄)により事業主が主張する離職理由を確認した後、「離職票2」の離職理由欄(7欄)により離職者が主張する離職理由を確認し、両者の主張に相違がないか把握します。
  • 事実確認資料
    さらに、それぞれの主張を確認できる資料により事実確認を行いますので、離職理由を確認できる資料の持参を求められる場合があります。
持参資料(例)
倒産等の場合
  • 裁判所における倒産手続きの申立てを受理したことを証明する書類など
  • 業務停止命令の事実が分かる資料など
解雇等の場合
  • 解雇予告通知書
  • 退職証明書
  • 就業規則
  • 賃金台帳
  • 給与明細書 など


3. 優遇措置について

特定受給資格者に該当すると一般の離職者に比べ失業給付(基本手当)の受給要件が緩和され、給付日数が優遇される場合がありますが、具体的には次のようになります。

3-1. 受給要件

基本手当の受給資格を得るのに必要な被保険者期間
◇ 一般の離職者の場合 → 12ヶ月以上(離職日以前2年間)
◇ 特定受給資格者の場合 → 6ヶ月以上(離職日以前1年間)

3-2. 給付日数

基本手当の給付日数は基本的には手厚くなりますが、離職時に45歳未満で被保険者期間1年以上5年未満の場合の給付日数は一般の離職者と同じ90日となり、一般の離職者と変わらないケースもありますのでご注意ください。

なお、最新情報は「ハローワークインターネットサービス」をご覧ください。


4. 参考資料

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準

あとがき

労働者からすると、雇用保険における離職理由は、失業給付(基本手当)に給付制限がかかったり、給付日数に差が生じたり、また被保険者期間(加入期間)の長短によっては支給されないこともあり得ますので、失業中の生活に直結する重要な問題と言えます。

したがって、離職理由(自己都合か会社都合や解雇か)を巡る労使トラブルはよく起こるのですが、中には事業主が、離職理由がはっきりしないにもかかわらず、一方的に自己都合として処理してしまったために起きているケースがあります。

このようなトラブルを未然に防ぐためには、事業主と労働者が離職に至るまでの経緯などを事前に相互確認しておくことが重要となります。

日常的に社内でコミュニケーションを図ることは重要ですが、それは退職していく労働者に対しても同じです。

もし、退職前に当事者間で話し合いができないなどの場合は、できる限り勝手な判断は避け、最寄りのハローワークや専門家などにご相談されることをおすすめします。