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精神障害への公的支援制度
労働社会保険レポート!

前回の「うつ病等の精神障害と労災認定」では、精神障害になった際に、業務上の疾病として認定されるか否かについての指針をご紹介しました。

今回は、精神障害になった際の治療や所得の補填といった公的支援制度についてレポートします。

<目次>

  1. 精神障害になった際の公的支援制度(業務上と認定された場合)
  2. 精神障害になった際の公的支援制度(業務上と認定されなかった場合)
  3. その他の公的支援制度

注) このレポートは 2008年1月8日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 精神障害になった際の公的支援制度(業務上と認定された場合)

仕事が原因でうつ病等の精神障害になった場合は、労災保険が適用され、治療費負担はなく、合計で給与の約8割がカバーされます。

以下は、その労災保険の給付内容です。

1-1. 療養補償給付

  • 受給できる額等
    診察・治療・看護など通常必要とされる治療を現物給付
  • 支給期間
    治癒(症状が固定)するまで
  • 備考
    労災指定病院で受診することになります。なお、労災指定病院以外で受診した場合は、一旦は自費で負担し、後日、労働基準監督署に請求することになります。

1-2. 休業補償給付

  • 受給できる額等
    給与の60%
  • 支給期間
    治癒するか傷病補償年金に切り替わるまで。なお、休業補償給付を受けていて、長期間経過し治癒(症状が固定)しない場合は、労働基準監督署の決定により傷病補償年金、傷病特別支給金、傷病特別年金に切り替わることもあります。この場合は、傷病による障害の程度が傷病等級に該当することが要件となりますが、退職後も受給可能です。

1-3. 休業特別支給金

  • 受給できる額等
    給与の20%
  • 支給期間
    治癒するか傷病補償年金に切り替わるまで
  • 備考
    休業補償給付と合わせると給与の80%となる。

2. 精神障害になった際の公的支援制度(業務上と認定されなかった場合)

業務上の疾病として認定されなかった場合は、健康保険の傷病手当金で対応することになります。

ただし、勤務先が健康保険に加入しておらず、市町村が運営する国民健康保険に加入している方は、傷病手当金の制度が取り入れられていないケースがありますのでご注意ください。

傷病手当金

  • 受給できる額等
    原則として給与の2/3
  • 支給期間
    支給開始日から最大1年6ヶ月
  • 備考
    他の公的補償を受けていると、原則支給されません。病気の種類、症状によっては障害年金の支給対象になる場合もありますので、詳しくは最寄りの年金事務所や社会保険労務士などにおたずね下さい。

3. その他の公的支援制度

精神疾患を有し、通院による精神医療を継続的に要する程度の病状にある方を対象とした制度として「自立支援医療(精神通院)制度」があります。

精神による疾患で、通院医療が継続的に必要な方の医療費(薬剤費を含む)の自己負担分を公費で負担する制度です。(公費の負担は、国と県とで1/2ずつです)

自立支援医療(精神通院)制度

  • 受給できる額等
    原則として1割負担
  • 支給期間
    有効期限1年(継続の申請により更新)
  • 備考
    所得に応じて一月当りの上限額も定められる。

あとがき

昨今では、マスコミなどでもよく取り上げられているように、「仮面うつ病」などを含めると、うつ病予備軍が多数おられるのではないかと推察されます。

うつ病等の精神疾患の兆候があっても、「治療に費用が掛かるし、休職や退職で収入が途絶えては困る」と思い、仕事を続けている労働者は少なくないのではないでしょうか…。

無理を重ねて重症化してしまえば元も子もありません。

今回ご紹介したように、労災保険や健康保険をはじめ、その他の公的制度もありますので、早めの治療、早めの完治が何よりも肝要かと考えます。