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今回は、最近増加している「うつ病等の精神障害」と労災認定の関係についてレポートします。
そもそも労災保険給付の対象となる業務災害とは、労働者の業務上の負傷・疾病・障害又は死亡をいいます。
業務上とは、業務が原因となったということで、業務と傷病等との間に一定の因果関係が必要とされています。
これまで私傷病とされてきたうつ病等の精神障害も、近年では業務に起因する労働災害と認定されるケースが増えてきました。
うつ病などの障害になった際、どのように業務上の疾病として認定されるのか、その指針をご紹介します。
なお、この指針で対象とされるているのは、原則として国際疾病分類第10回修正(ICD-10)の「精神及び行動の障害」に分類される精神障害をいいます。
注) このレポートは 2007年12月25日現在 の法令に基づき作成されています。
労働者が発病する精神障害は、
が複雑に関係しあって発病するとされています。
業務上・外の判断に当たっては、
について具体的に検討したうえで、次の判断要件により、総合的に判断されます。
次の1.~3.の要件をいずれも満たす精神障害が業務上の疾病として取り扱われることになります。
厚生労働省の判断指針で対象とされる精神障害を具体的に見ていくと、次の通りです。
「職場における心理的負荷評価表」を用い、精神障害を発病させる恐れがある程度の心理的負荷であるかどうかが検討されます。
下記1.~7.に分類された「出来事」及び「出来事に伴う変化等」の心理的負荷を総合的に評価し、「弱・中・強」のいずれかと認められるかが判断されます。その際に、総合評価が「強」と認められれば精神障害を発病させる恐れがある程度の心理的負荷とされます。
「業務以外の心理的負荷評価表」を用い、業務以外の心理的負荷の強度を評価し、「業務以外の強い心理的負荷がないか」が検討されます。
「職場における心理的負荷評価表」と同様、1.~6.に分類された「出来事」の具体的内容等を勘案のうえ、平均的な心理的負荷の強度が判断されます。
固体側要因として、次の1.~4.の事項に考慮すべき点が認められ、それらが精神障害を発病させる恐れのある程度のものと認められるか否かについて検討されます。
業務による心理的負荷、業務外の心理的負荷、及び固体側要因と労働者が発病した精神障害との関連性について調査した結果、業務による心理的負荷以外には、特段の心理的負荷、固体側要因が認められない場合で「職場における心理的負荷評価表」の総合評価が「強」と認められるときに業務上と判断されています。
しかし、業務による心理的負荷以外に、業務外の強い心理的負荷、著しい固体側要因が認められる場合には、「職場における心理的負荷評価表」の総合評価が「強」と認められる場合であっても、これらの精神障害の発病要因を検討し、業務による心理的負荷が精神障害の発病に有力な原因となっているか否かについて、さらに総合判断されることになります。
労災保険では、「故意」による災害は、保険給付の対象とされていません。
一般的に「自殺」は、本人の故意による死亡ですから基本的には保険給付の対象とならないのですが、うつ病等気分(感情)障害、重度ストレス障害などの精神障害では、その病態として自殺念慮が出現する蓋然性が高いと医学的に認められることから、これら精神障害が業務による心理的負荷によって発病したと認められた人が自殺を図った場合には、「精神障害によって、正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺を思い止まる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態」にあると推定され、業務起因性が認められることがあります。
今回は、「精神障害等」の労災認定の指針についてご紹介しましたが、本来は労災認定の問題に発展する前に、メンタルヘルスケア等の対策を講じ、労災を未然に防ぐ努力が大切ではないかと思います。
「心の健康」に対する関心・興味を喚起させ、メンタルヘルスが重視される働き易い職場風土を築くことが、結果的に企業の生産性向上にもつながるのではないでしょうか…。