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今回は、労働基準監督署が行う「臨検」(立入調査)と、その際に法令違反が見つかった場合などに行われる「是正勧告」、さらにはこれらへの対応についてレポートします。
昨今では、雇用・労働環境が激しく変化し、法改正も頻繁に行われています。
そんな中、企業の労務管理においては、意図せずとも法令違反となっているケースが散見されています。
労働基準監督署の労働基準監督官は、労働基準法等の法令違反があるかどうかを調べるために事業所への立入調査をする権限を与えられており、この調査のことを「臨検」といいます。
この「臨検」の結果、法令違反などの問題があった場合には、是正勧告書という書面を交付され、指定された期日までに是正するよう勧告されることとなります。
今回は、あまり知られていないこれらの内容について解説を試みたいと思いますので、労務管理に不安を抱えておられる方は、ぜひ今後の参考にして頂ければ幸いです。
注) このレポートは 2009年2月5日現在 の法令に基づき作成されています。
労働法令違反行為または違反状態が、労働者に重大かつ深刻な被害を及ぼす前に、それを是正し、事業主に労働法令を遵守させることを目的に労働基準監督署による監督制度が労働法令で定められています。
上述の監督制度に基づき労働基準監督官は、事業所等に臨検(立入調査)し、帳簿や書類の提出を求めたり、事業主や労働者に対して尋問を行ったりすることができます。
この臨検は、次の場合に行われます。
また、その他にも次の場合もあります。
一般に、労災事故が発生しやすい建設業・運送業・製造業又は過去に大きな労災事故を起こした事業所に対しては「臨検」が行われ、それ以外の事業所に対しては、主に残業不払いの有無などを確認する目的で「呼び出しによる事業所調査」が行われています。
類型を整理すると、次のように分類することができます。
<参考>
近年、労働者の権利意識の高まりや労働に関する知識の醸成が進み、労働者の申告・告発による事業所調査や臨検が急増し、それが最近の是正勧告増加の要因の一つになっています。
臨検の対象となる事項には、主に次のようなものがあります。
是正勧告される場合に、法令違反としてよく指摘される事項としては、主に次のようなものがありますのでご注意ください。
実際の是正勧告・是正報告では次のようなやり取りがなされます。
是正勧告を受ける場合は、同時に是正期限を指定され、期限内に是正した結果の報告を行わなければなりませんが、この期限は厳守です。
ただし、期限までにどうしても報告できない場合は、期限前に必ず電話等で理由を説明し、期限通りに報告書提出ができない旨を連絡しなければなりません。また、その際は、いつ頃までなら報告できるのかを示すことも大切です。
労働基準監督署の是正勧告を受けたにもかかわらず、
等の実態が明らかになると、当該行為が悪質とみなされた場合には、逮捕、送検されることもあります。
万が一、逮捕、送検された場合には、最近ではマスコミ等で取り上げられるケースも多く、企業の社会的信用が失墜したり、社員の採用に悪影響を及ぼしたりすることもありますので十分お気をつけ下さい。
いかがでしたでしょうか?
少し前の数字となりますが、是正勧告の実際の件数を見てみると、平成16年で約8万2000件(うち送検されたものは約1300件)に上っています。
また、残業代不払によるものは、平成17年度で定期監督約2500件、申告監督約2万9000件となっており、今後も益々増加するものと予測されています。
ただ、是正勧告は、よい意味で捉えると、会社の人事労務管理を見直す契機になると考えられます。
実際、是正勧告を機にまず事業主自身が意識改革し、人事労務制度や管理体制を見直すことによって、社員の士気が高まったり、職場の雰囲気が変わったりするケースもあります。
企業は営利を目的としている以上、業績や営業成績はもちろん優先課題と言えます。
しかし、そこで働く労働者のモチベーションを下げてしまったり、不満を抱かせたりしてしまっては、目標達成など到底覚束なくなってしまうでしょう。
その意味でも、より健全な企業の成長発展を目指すためには、日頃から是正勧告とは無縁の適切な労務管理を行うのが得策ではないでしょうか…。