兵庫県尼崎市西立花町3-4-1 パークビル201
TEL 06-6430-6318(営業時間:平日9:00~18:00)
かつて我が国においては、労働紛争と言えば集団的な紛争が大きなウェイトを占めていましたが、昨今では、企業組織の再編や労働組合の組織率低下による人事労務管理の個別化、また就業形態の多様化などを背景に、個々の労働者と事業主との間の紛争(個別労働関係紛争)が増加しています。
平成13年10月に施行された「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づく「個別労働紛争解決制度」はその中で大きな役割を果たしています。
今回は、このような状況を踏まえ個別労働紛争解決制度の概要や個別労働紛争の動向について、弊所の地元である兵庫県の場合を例にとってレポートしたいと思います。
兵庫労働局では、平成13年10月より総合労働相談コーナーを設け、個別労働紛争の解決援助サービスを無料で提供し、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進しています。
注) このレポートは 2008年1月15日現在 の法令に基づき作成されています。
労働者の不満や苦情には、法令・判例の不知、誤解に基づくものも多いことから、適切な情報提供、相談を行うことにより、紛争に発展することを未然に防止し、労使が自主的に解決することを促進するものです。
個別労働紛争の中には、法令や判例の理解が十分でないために不適切な行為を行って生じるケースが多数あることから、問題点及び解決の方向性を的確に示して助言・指導することにより自主的な解決を促進するものです。
紛争当事者間に第三者が入り、双方の主張の要点を確かめ、双方に具体的な解決の道を働きかけ、あっせん案を提示する等により迅速な解決を促進するものです。
平成18年度上半期の労働相談受付件数は、前年同期に比べ6.1%増加しているとのことで、相談内容は、
の順になっているとのことです。
主な相談内容の全体比(労働相談全体に占める各相談件数の割合)の動向を見ると、解雇、労働条件引下げは平成15年度以降減少していますが、いじめ・嫌がらせは増加の一途を辿っています。
助言・指導申出件数は、平成15年度以降減少していましたが、平成18年度上半期は、前年同期に比べ101.3%増加しているとのことです。
平成18年度上半期の紛争内容は、
の順になっているとのことです。
平成14年4月以降の傾向では、平成18年度上半期と同様、解雇341件、いじめ・嫌がらせ139件、労働件引下げ135件、退職勧奨83件などが上位を占めている形となっています。
あっせん申請件数は、平成15年度以降減少していましたが、平成18年度上半期は、前年同期に比べ21.4%増加しているとのことです。
平成18年度上半期の紛争内容は、
の順になっているとのことです。
平成14年4月以降の傾向では、平成18年度上半期と異なり、解雇315件、いじめ・嫌がらせ84件、労働条件引下げ58件、退職勧奨41件などが上位を占めています。
いじめ・嫌がらせ、セクシャルハラスメントなど、職場の人間関係を巡るトラブルは、労働相談から助言・指導やあっせんに移行する割合が高く、使用者責任を主張し、損害賠償や慰謝料を請求する事案が目立っているとのことです。
平成14年4月以降、労働相談から助言・指導に移行したものは、
また、労働相談からあっせんに移行したものは、
となっています。
弊事務所にも、職場でのトラブルを抱えた方からの相談が多く寄せられています。
その際に、都道府県が行っている個別労働紛争解決制度について説明させて頂くこともありますが、制度(サービス)の内容を知っておられる方は、意外と少ないものです。
個別労働紛争の最終的な解決手段としては、みなさんご存知のように裁判制度ということになりますが、それには多くの時間と費用が掛かってしまうのが通例です。(最近では労働審判制度という迅速な制度も登場しましたが…。)
その点、今回ご紹介した個別労働紛争解決制度は比較的短期間かつ少ない費用で済みますので、利用しやすい制度と言えます。ただし、裁判制度のような強制力はないという弱点もあります。
労使間の紛争は、あくまでも自主的解決が原則であり、法律でもその努力義務を課しています。
しかし、現実的には自主的解決に至らず、今回レポートしたように第三者に判断を委ねて解決を図るケースが増えています。
結局、個別労働紛争の解決には様々な手段・方法があるわけですが、実際に起こったケースによって、どの手段・方法を用いるのがよいのか判断を誤ると満足のいく結果が得られないということにもなり兼ねませんので、その点によく留意して頂ければと思います。