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労働安全衛生法の改正に伴い、ストレスチェック制度が2015年12月1日にスタートします。
これにより、労働者数が50名以上の事業場については、1年に1度、従業員に対するストレスチェックを実施しなくてはなりません。
しかし、実際にどのような方法で実施すればよいのか、あるいはその結果をどのように扱えばよいのか分からないという話を耳にします。
そこで本稿では、ストレスチェックの概要や実施方法、その後のフォローアップ方法などを紹介していきましょう。
注) このレポートは 2015年9月30日現在 の法令に基づき作成されています。
ストレスチェック制度は、労働者の心理的な負担がどの程度であるか、分かりやすく言えば「どれだけストレスがたまっているか」を把握するための検査(ストレスチェック)を実施するよう、労働者数50人以上の事業場を有する事業者に義務付けたものです(50人未満の事業場は当分の間、努力義務)。
ストレスチェックは医師か保健師、または一定の研修を受けた看護師や精神保健福祉士(以下、医師等)が行うもので、通常、50人以上の事業場には産業医が選任されているため、その者が実施することが望ましいとされています。
ストレスチェックは1年に1回、調査票を用いて行います。
どのような調査票を用いるかは事業者が選択できますが、厚生労働省では「職業性ストレス簡易調査票」を推奨しています。
ストレスチェックの結果は労働者に通知します。
このうち、高ストレス者として面接指導が必要だと評価された労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を行わなければなりません。
また、医師等が必要であると認めるときは、就業場所や作業の転換、労働時間の短縮、深夜勤務の回数を減らすといった措置を講ずるほか、衛生委員会や安全衛生委員会などに報告しなければなりません。
また、事業場の一定規模の集団(部、課など)ごとのストレス状況を分析し、必要があると認められるときは当該部署の職場環境を改善するよう努めなければなりません。
ストレスチェックの結果は5年間保存することが義務付けられています。
実施者が保存することが望ましいとされていますが、労働者が同意した場合に限り、事業者が実施者から結果の提供を受けて保存することもできます。
ただし、事業場内においてストレスチェックの実施事務に携わった社員は当然ながら守秘義務があり、職務上知り得た結果を漏らすことはもちろん、ストレスチェックとは関係のない業務に使用することも禁じられています。
また、人事権を持つ監督的地位にある者(社長や役員、人事部長など)はストレスチェックの事務に関わることができません。
常時使用する従業員数が50人未満の事業場においては実施が努力義務だと前述しましたが、実施する場合、1事業者だけで行うには負担が大きいと予想されます。
そこで同一の都道府県内に所在する複数(2~10)の事業場が、合同で産業医を選任し、ストレスチェックを実施する場合には、実施人数分の費用が助成される制度があります(1従業員につき500円)。
また、産業医がストレスチェックの実施についての助言、チェック実施後の面接指導、集団分析など、ストレスチェックにかかる活動を行った場合、1回の活動につき21,500円が助成されます(上限は3回まで)。
事前の手続きが必要になりますから、詳しくは社会保険労務士にお尋ねください。
厚生労働省が実施している調査によれば、日本の気分障害(うつ病および躁うつ病)の患者数は約96万人いるとされています(2011年調べ)。
世界統計で見ると女性や若年者に多いとされていますが、日本では中高年に多く、社会経済的影響が大きいことが分かります。
また、近年ではうつ病による欠勤や離職が労働災害に認定されるケースも少なくありません。
ストレスの多い事業場は労働者・事業者双方にとってマイナス要素となりますから、ストレスチェックを行い、定期的に労働者の心理状態を把握しておくことが重要です。
執筆 : 社会保険労務士 吉松 正人