兵庫県尼崎市西立花町3-4-1 パークビル201
TEL 06-6430-6318(営業時間:平日9:00~18:00)
今回は労働者派遣法(以下「派遣法」といいます。)の改正案や、現行法における派遣適正化の動きなどについてレポートします。
まず、改正案については当初、平成22年6月の通常国会で成立が見込まれていましたが、結局、成立には至らず次の国会での継続審議となりました。
廃案ではなく継続審議となっていることから改正される方向であるのは間違いないと考えられますので、その点を踏まえてご覧ください。
また、現行法の中で重点的に指導監督が行われていたり、実際に違法性が問われたりしているケースについても解説していきますので、労働者派遣に関係しておられる方は、ぜひ参考にして頂ければと思います。
注) このレポートは 2010年7月31日現在 の法令に基づき作成されています。
いわゆる「派遣切り」の問題などで注目された労働者派遣ですが、今回の改正案で抜本的な見直しが図られようとしています。
これらは、いわゆる「派遣切り」の多発、雇用の安定性に欠ける派遣形態の横行という派遣労働者の雇用の不安定さの解消が目指されています。
これらにより派遣労働者の不透明な待遇決定、低い待遇の固定化の解消が目指されています。
これらにより偽装請負などの違法派遣の増加、行政処分を受ける企業の増加の対処が目指されています。
平成22年3月から4月にかけて各都道府県労働局において「専門26業務派遣適正化プラン」に基づく指導監督が実施されました。
このプランに基づく適正化の対象は、いわゆる「派遣切り」で問題となった製造業務の派遣元(派遣会社)ではなく、事務関連業務で派遣実績の多い派遣元が中心となっています。
内容は、派遣可能期間の制限を免れることを目的に、専門26業務と称して違法派遣を行っていないか指導監督するもので、特に「事務用機器操作」や「ファイリング」の解釈を歪曲したり、拡大したりすることで派遣受入期間の制限のある「一般事務」であるにも関わらず、契約上は派遣受入期間の制限のない「事務用機器操作」や「ファイリング」としていないかがチェックされています。
平成22年6月に日本年金機構(東京事務センター)において、人材派遣会社2社が専門26業務の「事務用機器操作」であるとして派遣労働者を入力業務に従事させていましたが、この入力業務は数字や文字の単純入力で「事務用機器操作」には当たらず、派遣期間1年の「一般業務」であるにも関わらず、1年を超えて労働者派遣を行っていたとして所轄の東京労働局が是正指導していたというケースがありました。
厚生労働省所管の法人でもこのようなことが起こっていますので、一般事務と混同されやすい「事務用機器操作」や「ファイリング」については改めて注意が必要であると考えられます。
今回は、派遣法改正案の内容と現行法の中で特に注意すべき点について解説しました。
改正案の内容を見ると、規制が強化され一昔前に逆戻りするといった感がありますが、一方では抜け穴も多いのではないかとの議論もあります。
例えば、改正案では登録型派遣を原則禁止していますが、専門26業務については例外としています。
専門26業務については、専門的であるが故に常用雇用の代替のおそれが少ないことから派遣可能期間の制限がないこととなっていますが、本文中でも述べたように「事務用機器操作」の解釈を歪めてしまうと、従来通り違法派遣を続けてしまうことも考えられます。
派遣法改正については、最終的にはどのように落ち着くのか現段階では何とも言えませんが、いずれにしても現行法においても注意しなければならない点が含まれています。
違法派遣となれば、少なからず事業運営に支障をきたすことが考えられますので、何らかの不安や疑問を抱えているようであれば、ぜひ早めに最寄りの労働局(職業安定部)や専門家(社会保険労務士など)にご相談されてはいかがでしょうか…。