中薗総合労務事務所

   

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派遣と請負の違い
労働社会保険レポート!

昨今、労働者派遣法の改正をめぐる議論が活発化していますが、一方では「派遣から請負に切り替える」という声や動きをよく見聞きします。

では、労働者派遣と請負は、法律上どのような違いがあるのでしょうか…。

今回のレポートでは、その点についてまとめてみましたので、あまりご存じないという方は、ぜひ参考にして頂けたらと思います。

<目次>

  1. 労働者派遣事業とは
  2. 請負とは
  3. 労働者派遣と請負の区分(基準)
  4. 労働基準法等の適用について

注) このレポートは 2010年3月15日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 労働者派遣事業とは

労働者派遣事業とは、派遣元事業主(人材派遣会社など)が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働に従事させることを業として行うことをいい、一般派遣(登録型)と特定派遣(常用型)があります。


2. 請負とは

請負とは、労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法第632条)ですが、労働者派遣との違いは、請負には、発注者と労働者との間に「指揮命令関係がない」という点にあります。


3. 労働者派遣と請負の区分(基準)

発注者と労働者との間に指揮命令関係がある場合には、請負形式の契約により行われていても労働者派遣事業に該当し、労働者派遣法の適用を受けます。

ただし、この区分の実際の判断は、必ずしも容易でないことから、この判断を明確に行うことができるように行政通達(昭和61年労働省告示第37号)が定められました。

労働者派遣事業と請負の区分に関する基準の概要(抜粋)

(昭和61年4月17日労働省告示第37号)

請負の形式による契約であっても、次の各項目に該当しなければ、労働者派遣事業を行う事業主となります。

(1) 業務の遂行に関する指示について
  • 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示を自ら行うこと。
  • 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示を自ら行うこと。
(2) 労働時間管理について
  • 労働者の始業及び終業時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示を自ら行うこと。 ※単なる把握を除く
  • 労働者の労働時間を延長する場合又は休日に労働させる場合における指示を自ら行うこと。
(3) 企業における秩序の維持、確保等について
  • 労働者の服務上の規律に関する事項についての指示を自ら行うこと。
  • 労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。
(4) 独立性について
  • 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。
  • 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
  • 単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
  • 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備、器材(簡素な工具を除く)又は材料、資材により業務を処理すること。
  • 自ら行う企画又は自己の所有する専門的な技術や経験に基づいて業務を処理すること。


4. 労働基準法等の適用について

労働基準法、労働安全衛生法等の労働関係法については、原則として派遣元事業主が雇用主として責任を負いますが、派遣先事業主が責任を負う事項もあります。

従って、請負の形式による契約に基づいていても、労働者派遣と判断される場合には、同様の責任分担となりますのでご注意ください。


あとがき

上記3.でご紹介した請負としての基準をクリアしていると思っていても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであれば、労働者派遣事業であることを免れることはできないとの規定もあります。

労働者派遣に対する規制が強化されようとしている今、請負に対する正しい知識と理解が必要とされる場面がますます増えていくのではないでしょうか…。

筆者も労働局が行う立入検査に同席した経験がありますが、実際には、タイムカードの管理状況であったり、制服の区別がされているかなど、かなり細かいところまでチェックされたりします。

思わぬところで法違反を問われないよう、十分お気をつけ下さい。

そして、疑問や不安があれば、ぜひ早めにお近くの専門家などへご相談ください。