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懲戒処分・懲戒解雇の注意点
労働社会保険レポート!

今回は、「懲戒処分・懲戒解雇の注意点」についてレポートします。

昨今では、問題社員と言わざるを得ないような非違行為を起こす社員の話が、たびたびマスコミ等でも取り上げられています。

そのような時は、企業としては社内の秩序を保つために何らかの処分を下します。

では、実際にこのようなケースに遭遇した時に、企業としては、どのような点に注意して処分を行わなければならないのでしょうか…。

今回は、いざという時に慌てないために押さえておきたいポイントについてまとめてみましたので、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。

<目次>

  1. 懲戒処分の注意点
  2. 懲戒解雇の注意点

注) このレポートは 2013年9月16日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 懲戒処分の注意点

1-1. 懲戒処分の種類

懲戒処分は、企業秩序遵守義務違反に基づく制裁罰として行われますが、その種類・程度については、厳格な決まりはありません。

ですが、一般的には次のようなものが慣例として行われており、社会通念上、認知された処分内容と言えるでしょう。

  • 譴責(けんせき)
  • 減給
  • 出勤停止
  • 諭旨解雇
  • 懲戒解雇

1-2. 正当性の判断基準

懲戒処分は、その種類・程度について厳格な決まりがないとはいえ、社員の非行等に対して無制限に行うことができるわけではなく、そこでは「正当性」が求められます。

この「正当性」については、以下の原則を総合的に勘案して判断されますので、ぜひ押さえておいて下さい。

  • 明確性・該当性の原則
    明確性 → 就業規則に懲戒規定があるか
    該当性 → 懲戒事由に該当しているか
  • 相当性の原則
    その処分が、社会通念上相当であるか
  • 不遡及の原則
    事件発覚後の就業規則の変更は、遡及適用できない
  • 一事不再理の原則(二重罰の禁止)
    一度懲戒処分した不良行為について再び処分はできない
  • 手続保障(弁明の機会)
  • 平等主義(不当な動機・目的の有無)

1-3. 関係法律・裁判例

上記1-2.の根拠となる法律や有名な裁判例として、次のようなものがあります。

  • 労働契約法第15条
    客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする。
  • H15最高裁判例
    懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。
  • S43最高裁判例
    就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるためには、その内容の適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続がとられていることを要するものというべきである。
    就業規則の周知がなされていれば、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、またこれに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受けるものというべきである。

1-4. 就業規則等における対策

以上を踏まえると、懲戒処分を行おうとする際は、就業規則等において

  • 懲戒事由を明記すること
  • 就業規則を従業員へ周知すること

が不可欠となります。

つまり、どんな非違行為等を行えば、どのような処分の対象になるのかをあらかじめ定めておき、さらにその内容を従業員に知らしめておかなければ、処分が無効になることもあり得るということですのでご注意ください。


2. 懲戒解雇の注意点

2-1. 正当性の判断基準

使用者によって課せられる制裁罰のうちで最も重いものが懲戒解雇となりますが、最も重いが故に、その正当性の判断基準も厳しく求められると言えます。

  • 懲戒処分の基準を満たしているか
  • 「懲戒としての労働関係からの排除」を正当化するほどの事実があるか
    + 解雇予告手当の支払い(※解雇予告除外認定を受けた場合は不要)

2-2. 懲戒解雇事由の限定列挙

懲戒解雇を行う事由については、就業規則等に限定列挙(具体的に記載)することが必要とされており、あらかじめ定められていない事由に基づく懲戒解雇は、原則として認められないと考えられますので、就業規則等を作成する際は注意が必要です。

  • H8最高裁判例
    労働者を強制的に労働関係から排除するということなので、原処分を行った時の事実関係だけで原処分が合理的であったか否かの判断をすることになる。つまり、後で非違行為が発覚しても懲戒の理由に追加はできない。

2-3. 懲戒解雇に伴う退職金の不支給

懲戒解雇に伴って退職金を不支給とするためには、

  • 就業規則に定めがあるか(明確性)
  • 労働者のそれまでの勤続における功労を抹消する程の信義に反する行為があったか(相当性)

が可否判断のポイントとなります。

  • H7東京地裁判例
    退職金を不支給とすることができるのは、従業員に長年の功労を全く失わせる程度の著しい背信的行為があったときに限られる。

したがって、退職金を不支給又は一部不支給にする場合は、就業規則等にその旨記載があることが必要となります。