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今回は、呼出待機(緊急の場合等の呼び出しに備えて自宅待機を命じたり、呼出用の会社の携帯電話等を携行するよう命じること)への対応、とりわけ賃金(呼出待機手当など)の支払義務についてレポートします。
そもそも呼出待機中は、実際に業務に従事しているわけではありませんので労働時間に当たらないと考えてよいのでしょうか…。
もし、労働時間に当たらないと考えるならば、賃金の支払義務も生じないということになります。
この辺は非常に悩ましいところですが、法律や過去の裁判例、行政通達ではどのうように考えられているのかレポートにまとめてみましたので、対応にお悩みの際は、ぜひ参考にしてみて下さい。
注) このレポートは 2015年11月23日現在 の法令に基づき作成されています。
労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことを指し、明示的なものにせよ黙示的なものにせよ、労働者に対する何らかの具体的な指示がなく、労働者が間接的に拘束されているに過ぎない場合には、労働時間には当たらないとされています。
緊急の場合等の呼び出しに備えて自宅待機を命じたり、呼出用の会社の携帯電話を携行するよう命じたとしても、呼び出しがない時間については、どのような時間の過ごし方をしていても基本的には自由であり、結果的に呼び出しが行われなければ、使用者の指揮命令が直接及んだとは評価されず、原則として労働時間には該当しないと考えれているのです。
つまり、実際の呼び出しが行われた場合にのみ、その時点から労働時間として算定されるものと考えられています。
これに対して、労働者を事業場で待機させ、何らかの事態発生に備えて客先対応等が可能な状態にしておくことは、使用者の支配領域である事業場という場所的な拘束がある上、待機時間中も、客先対応等に備えておかなければならないので、使用者の現実的な拘束の下にあると評価され労働時間に含まれるものと考えられています。
医療機関には宅直勤務というものがあります。
これについて裁判所は、「自宅で待機していて急患などが発生した場合に、病院から呼び出され出勤するというものについては、呼び出しがない限り労働時間には当たらないが、病院内で待機している宿日直については労働時間に含まれる」と判断しました。(奈良県(医師時間外手当)事件 奈良地裁 平21.4.22判決)
つまり、これが上記1. の根拠となる裁判例といえます。
呼出待機に関する法律的な解釈は既述の通りで、労働時間に当らない以上は賃金支払義務も生じないことになりますが、実際問題としては、それでは呼出待機が生じる部署や従業員のやる気が低下するという懸念があります。
そして、他部署に対する不公平感が不満となり、それが組織全体に悪影響を及ぼす恐れもあります。
したがって、担当部署や担当従業員のやる気を維持するために、何らかの対策を考える必要が出てきます。
主な対応策には次の3つの例が挙げられます。
筆者の事務所においてもこの種のご相談を受けることがあり、その際は状況をよくお聞きしたうえで判断することにはなりますが、結果的には「対応例1」に落ち着くケースが多くなっています。
やはり、労働時間ではないからといって何も支払わないというわけにはいかず、かといって待機時間=労働時間とみなして時間外手当等を満額支払うとなると企業等にとっては過大な負担となってしまいます。
ということで、落ち着くところは「対応例1」となるのが一般的なケースとなっているのでしょう…。