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今回は、「未払賃金立替払制度」についてレポートします。
この制度は、意外とご存じない方が多いのではないかと思われますが、勤務先の会社等が不幸にして倒産した場合に、未払いとなっている賃金や退職金があれば、国の外郭団体がその会社等に代わって立替払を行ってくれるというものです。
勤務先の会社等が倒産すれば、一般的には「どうしようもないじゃないか!」と考えがちですが、実はこういった制度をうまく利用すれば泣き寝入りしなくて済むわけです。
ただ、立替払を受けるには色々なルールがありますので、今回はその辺についてご紹介していきたいと思います。
注) このレポートは 2008年10月11日現在 の法令に基づき作成されています。
未払賃金立替払制度は、企業倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を立替払する制度で、全国の労働基準監督署及び独立行政法人労働者健康福祉機構(以下「健康福祉機構」といいます。)で制度を実施しています。
立替払を受けることができるのは、使用者及び労働者について、次の要件を満たしている場合です。
この場合の倒産には、大きく分けて次の2つがあります。
倒産について裁判所への申立て等(法律上の倒産の場合)、又は労働基準監督署への認定申請(事実上の倒産の場合)が行われた日の6ヶ月前の日から2年の間に退職した者であること。
労働者は、未払賃金の額等について、法律上の倒産の場合には破産管財人等による証明を、事実上の倒産の場合には労働基準監督署長による確認を受けたうえで、健康福祉機構に立替払の請求を行いますが、これは破産手続開始の決定等がなされた日又は監督署長による認定日から2年以内に行う必要があります。
立替払の対象となる未払賃金は、労働者が退職した日の6ヶ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している定期賃金と退職手当のうち、未払となっているものです。
ただし、次のものやケースは対象となりませんのでご注意ください。
立替払の額は、未払賃金の額の8割です。
ただし、退職時の年齢に応じて88万円~296万円の範囲で上限が設けられています。
この制度により立替払が行われた場合は、健康福祉機構がその分の賃金債権を代位取得し、本来の支払責任者である使用者に求償することとなります。
いかがでしたでしょうか?
ご覧いただいたように、この制度はそれほど複雑な仕組みとはなっていません。
ですので、知っているか知らないかの世界なのです。
賃金は、労働の対価として各種法律では手厚い保護の対象とされています。
例えば、会社等の倒産などの際には、税金や社会保険料の次に優先して弁済を受けられるようになっています。(これを「先取特権」と呼んでいます。)
せっかく働いても何の対価もないのでは、あまりにも労働者に酷だということです。
今回、この制度をご紹介するに当たって一つご注意いただきたいのは、使用者側の問題です。
経営が苦しくなってくると、どうしても「賃金遅配」や「賃金不払」が起こりやすくなります。
しかし、安易にこの制度があるからといって、そういった賃金の取り扱いだけはしないで頂きたいのです。
この制度で救われるのはあくまで労働者なのであって、使用者側が責任を逃れるための制度ではないことに注意しなければならいと思います。
まして、労働者が救われるといっても全額救済されるとは限らないのですから…。
広い意味で考えると、この制度はもしもの時の救済制度なのであって、それを使用者側が間違って捉えていい加減な態度をとってしまえば、世の中が成り立たなくなってしまいます。
厳しい言い方かもわかりませんが、その辺の制度主旨を取り違えてしまうと、せっかくの制度が活かされず、本末転倒、何のための制度なのかわからなくなってしまいますので、十分ご留意いただけたらと考えます。