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賃金の基本ルール
労働社会保険レポート!

今回は、労働基準法の中でも重要な「賃金」に関する基本ルールについてレポートします。

賃金については、押さえておくべきポイントが数多くありますが、特に必要と思われる7項目について解説します。

<目次>

  1. 賃金の定義
  2. 賃金支払5原則と例外
  3. 最低賃金
  4. 割増賃金
  5. 休業手当
  6. 出来高払制の保障給
  7. 減給

注) このレポートは 2007年2月15日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 賃金の定義(賃金となるもの・ならないもの)

そもそも、賃金とは何なのか? どこまでが賃金と判断されるのか? について解説します。

1-1. 賃金の定義

労働基準法では、賃金について「賃金、給料、手当、賞与等の名称を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義しています。

1-2. 具体的な判断事例

しかし、現実には、賃金に当たるのかどうか迷うもの(各種手当等)が多々あります。

法律的には、概ね次のように判断されています。

賃金となるもの
  • 通勤定期券
  • 休業手当(労基法第26条に基づき支給されるもの)
  • 育児休業中の賃金
  • 労働者が負担すべき税金や社会保険料について事業主が肩代わりした分
  • 福利厚生費(就業規則等で支給条件が明確になっている場合)
賃金とならないもの
  • 恩恵的給付(退職手当、結婚祝金、災害見舞金など)
    ただし、就業規則等であらかじめ支給条件が明確であれば賃金となります。
  • 作業服、制服
  • 出張旅費
  • 交際費
  • 休業補償(業務上の災害に基づくものなど)
  • 生命保険料(事業主負担分)
  • 福利厚生施設
  • 解雇予告手当
  • ストックオプションによる利益

<注意>
税法と社会保険では、賃金に該当するかについて、それぞれ異なった解釈がなされますのでご注意ください。



2. 賃金支払の5原則と例外

賃金の支払については、次のような5原則と例外が定められています。

2-1. 5原則

  1. 通貨払い
  2. 直接払い
  3. 全額払い
  4. 毎月1回以上払い
  5. 一定期日払い

2-2. 通貨払いの例外

  • 法令、労働協約に別の定めがある場合(通勤定期券など)
  • 労働者の同意を得た場合(書面不要)
  • 労働者の指定する金融機関口座へ振込みする場合
  • 退職手当の支払い(銀行振出小切手、支払保証小切手などでも可)

2-3. 直接払いの例外

  • 使者への支払い(代理人は不可)

2-4. 全額払いの例外

  • 別に法令で定められているもの(税金、社会保険料など)
  • 労使協定で定められているもの(組合費、社内預金など)

2-5. 毎月1回以上払い及び一定期日払いの例外

  • 臨時給与、賞与
  • 精勤手当、勤続手当など1ヶ月超の期間に対して支払われるもの

3. 最低賃金

賃金の最低基準は、「最低賃金法」により地域別、産業別に定められています。
〔参考〕 便利ツール ⇒ 「最低賃金(都道府県別一覧)」へ


4. 割増賃金

4-1. 割増率

時間外労働(残業)に対する割増率は、次のように定められています。

  • 時間外労働・休日労働 → 25%~50%以上
  • 深夜労働(午後10時~午前5時)→ 25%以上

4-2. 割増賃金の計算から除外されるもの

割増賃金の計算では次のものは除外されます。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時の賃金
  • 1ヶ月超の期間ごとに支払われる賃金
  • 固定残業手当(又は定額残業手当)

5. 休業手当

使用者の都合により労働者を休ませた場合は、使用者に休業手当の支払義務が生じます。

主な注意点は、次の通りです。

  • 原則 → 平均賃金の60%以上
  • 平均賃金=3ヶ月間の賃金総額÷3ヶ月間の総暦日数
    平均賃金には、賃金総額や総暦日数から除外されるものがあります。
  • 全額保障の可能性
    休業手当の支払義務は、個別案件ごとに判断され、過去には60%ではなく全額保障が求められた裁判例もありますのでご注意ください。

6. 出来高払制の保障給

出来高払制、請負制で使用する労働者に対しては、労働時間に応じた一定額の賃金を保障しなければなりません。つまり、極端な例では「出来高0=賃金0」は、法律上は認められていませんのでご注意ください。


7. 減給

制裁等で減給する際は、無制限にできるわけではなく、次の基準を超えてはならいとされています。

  • 1回当りの限度額 → 平均賃金の50%以内
  • 総額 → 一賃金支払期における賃金総額の10%以内

あとがき

いかがでしたでしょうか…?

賃金については、「使用者と労働者の合意があれば、何でも出来るのではないか?」と思われる方がいらっしゃるかもわかりませんが、労働基準法では、基本的に労働者を経済的弱者として保護する立場をとっています。

したがって、使用者(会社)が労働者を雇用しているという強者の立場を利用して、何でも自由に決めてしまうことに一定の制限をかけていると認識しておきましょう。

ただし、一方では ノーワーク・ノーペイの原則 という考え方があり、労働者が現実に働いた部分については、当然それに見合った賃金を支払う義務が生じますが、現実に働いていない部分まで必要以上に保護することはないとされていますので、その点を最後に補足します。