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企画業務型裁量労働制
労働社会保険レポート!

今回は、「企画業務型裁量労働制」についてレポートします。

裁量労働制には、「専門業務型」もありますが、この「企画業務型」は、事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定等を行っている対象労働者について、実際の労働時間にかかわらず、労使で定めた時間を働いたものとみなすという制度(みなし労働時間制)をいいます。

「専門業務型」は対象となる業務が法令で定められていますが、こちらは事業場や業務内容の実態で判断されることになります。

その分、導入に当たっては、細かな手続きが定められていますので、今回のレポートでよく確認して下さい。

そのうえで、「企画業務型」も「専門業務型」と同じく、通常の労働時間管理に適さないという事情に対応するために設けられた制度ですので、そうした事情があれば、導入を検討されてはいかがでしょうか…。

<目次>

  1. 企画業務型裁量労働制の導入の流れ(全体像)
  2. 企画業務型裁量労働制を導入できる事業場
  3. 労使委員会の組織化の流れ
  4. 労使委員会での決議事項
  5. 所轄労働基準監督署長への届出
  6. その他(Q&A)

注) このレポートは 2015年3月11日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 企画業務型裁量労働制の導入の流れ(全体像)

企画業務型裁量労働制の導入の流れは、次のようになります。まずは、全体像をつかみましょう。

  1. 導入可能な事業場か確認する。
  2. 労使委員会を組織する。
  3. 企画業務型裁量労働制の実施のために労使委員会で決議する。
  4. 対象となる労働者の同意を得る。
  5. 上記3.の決議に従い企画業務型裁量労働制を実施する。
  6. 決議の有効期間(3年以内とすることが望ましい)の満了 ※継続する場合は3.に戻る。

2. 企画業務型裁量労働制を導入できる事業場

この制度は、いかなる事業場においても導入できるということではなく、「対象業務が存在する事業場」です。具体的には、次の事業場が該当します。

  1. 本社・本店である事業場
  2. 上記1.のほか、次のいずれかに掲げる事業場
    当該事業場の属する企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行なわれる事業場
    本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等である事業場

つまり、単に製造等の作業や当該作業に係る工程管理のみを行っている事業場や、本社・本店又は支社・支店等である事業場の具体的な指示に従って営業活動のみを行っている事業場などは、そもそも企画業務型裁量労働制を導入することはできません。


3. 労使委員会の組織化の流れ

STEP1 : 労使の話し合い
労使委員会を設置するに当たり、まずは、対象事業場の使用者及び労働者の過半数を代表する者又は労働組合は、労使委員会の設置に係る日程、手順等について話し合います。
STEP2 : 労使各側を代表する委員の選任
労使委員会の委員に関する要件は、次の通りです。
  • 労働者を代表する委員と使用者を代表する委員で構成されており、労働者を代表する委員が半数以上を占めていること。
  • 労働者を代表する委員は、過半数組合又は過半数代表者に任期を定めて指名を受けていること。
なお、使用者を代表する委員は、使用者の指名で選任します。
STEP3 : 運営ルールの決定
労使委員会の運営ルールを定めるなど、次の手続をとることが求められます。
  • 委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要な事項を規定する運営規程を、労使委員会の同意のうえ策定すること。
  • 開催の都度、議事録を作成、保存(3年間)し、作業場への掲示等により労働者に周知すること。

4. 労使委員会での決議事項

労使委員会では、次の1.~8.の事項について、労使委員会の委員の5分の4以上の多数により決議することが必要です。

  1. 対象となる業務の具体的な範囲(「経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、経営に関する計画を策定する業務」など)
    (注:対象となる業務は、企業等の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務の遂行方法等に関し使用者が具体的な指示をしないこととするものです。したがって、ホワイトカラーの業務全てが該当するわけではありません。)
  2. 対象労働者の具体的な範囲(例:「大学の学部を卒業して5年以上の職務経験、主任(職能資格〇級)以上の労働者」など)
  3. 労働したものとみなす時間
  4. 使用者が対象となる労働者の勤務状況に応じて実施する健康及び福祉を確保するための措置の具体的内容(例:「代償休日又は特別な休暇を付与すること」など)
    なお、次の事項についても、決議することが望まれます。
    使用者が対象となる労働者の勤務状況を把握する際、健康状態を把握すること。
    使用者が把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、対象労働者への企画業務型裁量労働制の適用について必要な見直しを行うこと。
    使用者が対象となる労働者の自己啓発のための特別の休暇の付与等、能力開発を促進する措置を講ずること。
  5. 苦情の処理のため措置の具体的内容(例:「対象となる労働者からの苦情の申出窓口及び担当者、取扱う苦情の範囲」など)
  6. 本制度の適用について、労働者本人の同意を得なければならないこと、及び不同意の労働者に対し、不利益取扱いをしてはならないこと。
    なお、次の事項についても、決議することが望まれます。
    企画業務型裁量労働制の制度の概要、企画業務型裁量労働制の適用を受けることに同意した場合に適用される評価制度、及びこれに対応する賃金制度の内容、ならびに同意しなかった場合の配置及び処遇について、使用者が労働者に対して明示し、当該労働者の同意を得ることとすること。
    企画業務型裁量労働制の適用を受けることについての労働者の同意の手続(書面によることなど)
    対象となる労働者から同意を撤回することを認めることとする場合には、その要件及び手続き
  7. 決議の有効期間(3年以内とすることが望ましいとされています。)
    なお、委員の半数以上から決議の変更等のための労使委員会の開催の申出があった場合は、決議の有効期間の中途であっても決議の変更等のための調査審議を行うものとすることについても、決議することが望まれます。
  8. 企画業務型裁量労働制の実施状況に係る記録を保存すること(決議の有効期間中及びその満了後3年間)

また、1.~8.の他に、使用者が、対象となる労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更しようとする場合にあっては、労使委員会に対し事前に変更内容の説明をするものとすることが決議事項として望まれています。


5. 所轄労働基準監督署長への届出

労使委員会で決議したことは、所定様式により所轄労働基準監督署長へ届け出なければ、本制度の効果が生じないとされています。


6. その他(Q&A)

最後に、細かなところの注意点をQ&A形式でまとめていますのでご参照ください。

Q1. 対象となる労働者本人の同意はどのように得るのですか?
A1. 対象労働者に本制度を適用するには、決議に従い、対象となる労働者の個別の同意を得なければなりません。また、不同意の労働者に対しては、使用者は解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。なお、就業規則による包括的な同意は、「個別の同意」に当たらないとされていますのでご注意ください。
Q2. 実施した際の効果はどうなりますか?
A2. 本制度の実施により、対象労働者については「実際の労働時間と関係なく、決議で定めた時間労働したものとみなす。」という効果が生じます。ただし、休憩、法定休日や深夜業の割増賃金の規定は、原則通り適用されます。
Q3. 導入後に必要な手続きはありますか?
A3. 使用者は、健康及び福祉を確保するための措置や苦情の処理のための措置などの決議で定めた措置を実施しなければなりません。また、決議が行われた日から起算して6ヶ月以内ごとに1回、所定様式により所轄労働基準監督署長へ、定期報告を行うことが必要となります。
報告する事項は、次の通りです。
  • 対象となる労働者の労働時間の状況
  • 対象となる労働者の健康及び福祉を確保するための措置の実施状況