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今回は、「年次有給休暇の基本」についてレポートします。
年次有給休暇は、使用者にとっても、労働者にとっても大きな関心事であるにもかかわらず、意外と知られていない細かなルールが多数存在します。
本稿では、最低限押さえておきたいルールをまとめていますので、ぜひ制度の運用や就業規則を作成する際などの参考にして頂ければ幸いです。
注) このレポートは 2010年12月1日現在 の法令に基づき作成されています。
年次有給休暇とは、雇入日から起算して6ヵ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して与えられる休暇のことをいいます。(労働基準法39条)
継続勤務とは、在籍期間を指すので、起算日は個々の労働者の雇入日となります。
もし便宜上、起算日を4月や10月に統一する場合は、労働者の不利にならないよう、端数は切り上げなければなりません。
全労働日とは、総暦日数から就業規則等で定められた所定休日を除いた、就労すべきと定められている日を意味しますが、次の期間については、出勤したものとみなされます。
年次有給休暇は、上記1.の要件を満たせば10労働日、以降1年ごとに継続年数に応じた日数が与えられます。
これをまとめると、次の通りとなります。
勤続年数 | 有給休暇日数 |
---|---|
6ヵ月 | 10日 |
1年6ヵ月 | 11日 |
2年6ヵ月 | 12日 |
3年6ヵ月 | 14日 |
4年6ヵ月 | 16日 |
5年6ヵ月 | 18日 |
6年6ヵ月 | 20日 |
出勤率が8割に満たなければ、その年は新たな有給休暇は発生しませんが、その翌年に8割以上出勤した場合には、上記の勤続年数に応じた有給休暇の権利が発生します。
1週間の所定労働日数が、通常(5.2日)と比べて少ないパートタイマー等(労働日数が週4日以下又は年間216日以下。但し、週30時間以上の者を除く。)については、通常の労働者とのバランスが考慮された日数となります。
これを比例付与といい、具体的には、次の計算例のように求められます。
≪比例付与の計算例≫
勤続6ヵ月、週4日勤務の場合
10労働日 × 4 ÷ 5.2 = 7.69 → 7労働日
その年に取得されなかった年次有給休暇は、翌年度に限り繰り越せるものとされています。
例えば、勤続1年6ヵ月の人が、前年の10日をまったく取得していなかった場合には、「10日(前年未取得分)+11日(新たな付与分)=21日」が、その年の年次有給休暇の取得可能日数ということになります。
年次有給休暇中の賃金は、就業規則等で定めるところにより
のいずれかであり、一般的には、後者が多いと思われます。
また、これとは別に、労使協定を締結している場合には、「健康保険法に定める標準報酬日額」とすることもできます。
なお、労働基準法136条では「年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他の不利益な取り扱いをしないようにしなければならない。」と定めていますのでご留意ください。
年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えるのが原則とされており、これを労働者の 時季指定権 といいます。
しかし、多くの労働者が一斉に休暇を取ったりすると、事業の運営が成り立たないことは明らかです。
こうした事態を回避できるように、「労働者の請求した時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、これを他の時季に振替えて与えることができる。」とされています。これを使用者の 時季変更権 といいます。
なお「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、単に使用者からみて業務が繁忙であるというだけではなく、あくまでも個別的、具体的、客観的に判断されるべきものであるとされています。
「労使協定により有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、5日を超える部分(前年度からの繰越し分を含む)については、その定めにより有給休暇を与えることができる。」とされており、これを計画付与といいます。
この計画付与には、例えば、次の各方式があります。
いずれにしても、計画付与により一斉に年次有給休暇を与えるのであれば、残日数が5日未満の人も含めて付与しなければなりませんのでご注意ください。
労使協定により、次の4つの事項を定めた場合には、労働者の請求に基づき1年に5日を限度として時間を単位として有給休暇を与えることができます。
なお、半日単位の付与は、協定不要で認められています。
病気欠勤日や忌引などに年次有給休暇を充当することは、使用者が一方的に行うことは許されないが、労働者の希望によるのであれば違法でなないとされています。(昭23.12.23基収4263号)
また、労働義務を免除される休職期間中などは、年次有給休暇を請求する余地がなく、振替の問題も生じえないとされています。(昭31.2.13基収489号)
事業の廃止、労働者の解雇や退職によって労働関係が消滅した場合には、有給休暇請求権も消滅すると考えられています。
したがって、例えば、解雇の予告が行われた場合は、休暇の権利は予告期間中に行使しなければ消滅するとされています。(昭23.12.23基収4264、昭23.4.26基発651号)
年次有給休暇の未消化日数に応じて一定の賃金を支払う(これを「休暇の買い上げ」といいます。)は、制度の趣旨からして違法とされています。
ただし、これはあくまでも労働基準法上の年次有給休暇についてであって、同法に定める最低基準を上回る部分の休暇については、買い上げも違法とはいえないし、また、既に時効消滅した休暇の買上げも差し支えないとされています。(昭23.10.15基収3650号)