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今回は、「残業時間の抑制」についてレポートします。
昨今、巷では過払金返還請求の次は「未払残業代請求だ!」と囁かれていますが、そもそも不要な残業(時間外労働)自体、企業の収益面、従業員の健康面からすると、抑制するに越したことはありません。
残業が発生する要因は、事業所によって様々でしょうから、その抑制方法も一概には語れません。
しかし、対策を少しずつでも講じていくか否かで、後に雲泥の差が生じます。
残業問題は、ただ単に「減らせ!」との大号令をかけるだけで解決するものではなく、現実的に抑制していくには、具体的な対策を打つ必要があります。
本稿では、残業時間や残業代の増加でお悩みの経営者、労務管理担当者様に向けて、その対策を考えていくうえでの 7つのヒント をまとめてみました。
注) このレポートは 2010年6月18日現在 の法令に基づき作成されています。
一般的に、企業等においては、規模が拡大して従業員が増えたり、法律や制度改正などによって業務のやり方が変わったりすると、それまでに無かった仕事や事務処理がどんどん増えていきます。
その結果、所定労働時間内に処理できなかった業務が残業となってしまいますが、そうした業務量の増大を抑えるためには、捨てる! 改める! 新しくする! の発想で、常に業務を見直していかなければなりません。
つまり、不要な業務は廃止し、やり方に問題があればやり方を見直し、根本的に業務プロセスを変える必要があるなら変えてしまう(例:電子化する)等によって、まずは業務量自体を減らしたり、省力化や省人化を図っていく必要があります。
いくら業務を省力化、省人化したとしても、業務を遂行するのは、やはり「人」ですので、スピーディーな業務処理を行うための人材育成は欠かせません。(例:定期研修、OJTなど)
そして、業務の中には
が、必ずといっていいほど混在していますので、上記1.は基幹的従業員が行い、上記2.はパート・派遣社員などの補助的従業員が行うようにすることで効率化は図れます。
つまり、業務分担を見直し、例えば、基幹的従業員が、本来は避けたい定型的業務まで行ってしまう結果、残業を強いられるという状況を防ぐのです。
また、ある特定の業務ついて、この人しかできないという状況を作ってしまうと、本来、分担できるはずの業務を分担できなくなり、非効率になってしまうことがありますので、そのような状況を作ってしまわない工夫も必要でしょう。
業務特性と、会社が設定した所定労働時間がマッチしていないと、残業時間は増加しやすくなります。
例えば、所定労働時間中に手待時間が多く含まれていると、実質的には休憩しているにもかかわらず労働時間としてカウントされ、結果的に残業時間が増えてしまうというケースがあります。
そうした場合には、所定労働時間(例:8時間)は変えずに、休憩時間だけを思い切って増やすという対策が考えられます。
ただし、これにより従業員は拘束時間が増えることになりますので、不満要因とならないような配慮(あくまで実態に即している)が必要となります。
労働基準法においては、現代の労働環境の多様化に合わせて、種々の労働時間制が用意されています。
一定の要件に当てはまっているなら、これらの制度をうまく活用することで、残業抑制につながることがあります。
例 | 制度 |
---|---|
外回りの営業職など | 事業場外のみなし労働時間制 |
1ヶ月の中で繁忙期と閑散期がある場合 | 1ヶ月単位の変形労働時間制 |
1年の中で繁忙期と閑散期がある場合 | 1年単位の変形労働時間制 |
小規模な小売店、旅館、飲食店など | 1週間単位の非定型的変形労働時間制 |
業務開始・終了の時刻が日によってまちまちの場合 | フレックスタイム制 |
新製品の研究開発業務、情報処理の分析業務等 | 専門業務型裁量労働制 |
事業運営に関する企画・立案・調査・分析の業務 | 企画業務型裁量労働制 |
残業を行うかどうかの判断を従業員に委ねているケースがよくありますが、これですと、本来は不要不急であるはずの残業が増えてしまう懸念があります。
このような場合には、事前に管理監督者(上司)に届け出たり、許可を得ることを義務付けることによって牽制機能を働かせ、不要不急な残業を防げるようになります。
また、管理監督者は、そもそも残業代の支給対象とはなりませんので、管理監督者に該当するかどうかも、大きなチェックポイントとなります。
※ 関連レポート ⇒ 「管理監督者の判断基準」へ
いくら業務や所定労働時間を見直したとしても、やはり常態的に所定労働時間(例:1日8時間、1週40時間)を超えてしまうことがあります。
そのような場合は、通常なら発生するであろう残業代を、あらかじめ「固定残業手当」又は「定額残業手当」として支給するようにし、残業は、必ずその範囲内に納めるという工夫や努力を促すようにした方がよい場合があります。
そうすることで、「残業代で稼ごう」といった、いわゆるダラダラ残業の温床を防ぐ効果が期待できます。
残業代も賃金の一部と考えると、昇給が期待できそうにないとなると、従業員は当然、残業代でその分を賄おうという考えになります。
しかし本来、賃金の原資は、企業が生み出す利益ですので、利益が増えないのに人件費(残業代含む)だけが高騰してしまうと、いずれ経営が立ち行かなくなってしまいます。
そこで、残業代を頼りにするという発想から、いかに「生産性を上げるか」に目を向けさせることが重要となってきます。
もちろん、支給すべき残業手当は支給しなければなりませんが、基本的には、生産性なくして分配なし! の考え方で、企業とそこで働く従業員が、共に幸せになるような発想を浸透させていかなければなりません。
そうした風土づくりや意識改革が進めば、結果として残業抑制につながっていくものと考えられます。
ご存知のように、残業の時間単価は通常の1.25倍となり、さらに平成22年4月からは法改正により、月60時間を超える部分は1.50倍となりました。(中小企業には猶予期間あり)
それを考えると、余分なコストが増えるという面からも、ますます残業問題は放置できなくなってくるわけですが、一方で、コスト以上に、時間当りの生産性が上がっているのであれば、残業代をその通り支払っても何ら問題ないという考え方もあります。
つまり、「売上高 ÷ 労働時間」で、同じ売上高のあがる仕事をいかに効率よくこなせるか、又は同じ労働時間ならその範囲内でいかに売上高を増やせるかによって、残業は善にも悪にもなるのです。
過重労働の問題を引き起こす程の過度な残業となると話は別ですが、「時間当りの生産性をいかに上げるか!?」こそが、この問題を解決していくうえでの本質的な問題ではないかと考えます。
とはいっても、生産性を上げるというのは、一朝一夕にいくものではありません。
ですから、どこかで帳尻を合わすために残業代を支払わないといったことが起こるわけですが、だからといって冒頭でも述べた通り、少しずつでも改善を進めていくか否かで、長い目で見ると雲泥の差が生じます。
ぜひ高い意識を持って、今回のレポートを参考に、改善を進めて頂ければと思います…。