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終身雇用制の崩壊とともに、転職は一般的に珍しいことでありません。
今回は、従業員の転職前後に関する相談が増えている現状に鑑み、従業員が競業会社、つまり、ライバル会社へ転職する際の法律的な見方や考え方についてレポートしたいと思います。
注) このレポートは 2007年4月17日現在 の法令に基づき作成されています。
競業避止義務とは、「使用者と競合する業務を行わない義務」のことですが、在職中と退職後では、その義務の課せられ方が違うという点を、まずは認識しておきましょう。
在職中の従業員には、使用者の正当な利益を侵害してはならいという「忠実義務」が課せられており、それに付随する義務として「競業避止義務」を負うと考えられています。
これは、就業規則や個別の特約の有無に関係なく、そのように考えられています。
したがって、在職中の従業員は、当然その会社の利益を最大化することが求められますので、ライバル会社へ加担するような行為は、一切認められないということになります。
一方、退職後の競業避止義務については、就業規則や労働契約などによりあらかじめ明示されていなければ、その存在を主張することは困難であると考えられています。
したがって、最低限、就業規則などには規定しておく必要があります。
ただ、就業規則などで退職後の行動まで制約できるのか? という考え方もあり、就業規則などに退職後の競業避止義務について記載さえしていれば何ら問題ないかというと、そういうわけでもありませんのでご注意ください。
ここ最近は、退職時に秘密保持や競業避止義務に関する誓約書の提出を求める会社が増えています。
これらは、就業規則にその趣旨の規定があり、誓約書の内容がそれと同趣旨のものであれば提出の義務があると考えられていますが、就業規則にその趣旨の規定がなかったり、就業規則での規定以上に厳しい内容を課す場合は、提出義務はないと考えられています。
この種の問題点は、結局、
という2つの相反する考え方がぶつかりあって起きていると言えます。
過去の裁判例などを見ると、退職した従業員に自由競争の原理を認めている反面、会社側にも正当と認められる範囲で、一定の保護が与えられています。
したがって、例えば、10年間や永久にライバル会社への転職は認めないなど、明らかに行き過ぎた競業避止義務を課すことは無効とされますが、ある程度の範囲であれば認められています。
ただし、保護の可否は、個別ケースごとに判断されており、
を総合的に見て判断されていますので、一概に競業避止義務は何年までならOKといった明確な基準や線引きがない点にご注意ください。
退職者がライバル会社に転職したり、ライバル会社を設立すると、「営業秘密の侵害」、「引抜行為」、「顧客簒奪(さんだつ)行為」等の問題が起こるケースがあります。
これらも自由競争の原理を逸脱するような不法行為(故意・重大な過失、悪意があった場合など)は、損害賠償請求の対象となり得ますので、一緒に押さえておかれるとよいでしょう。
結局、「退職後にライバル会社に転職することは可能ですか?」と問われれば、「可能」ということにはなります。
ただし、従前勤務していた会社に対して背信的な行為があった場合には、一定の制限がかかる可能性があるとご理解ください。
さらに、制限内容には法律上の明確な基準や線引きはなく、個別ケースごとに妥当性が判断されるという点を、ポイントとして押さえておかれるとよいでしょう…。