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事務所通信「月刊 人とみらい」2017年11月号より抜粋してご紹介します。
原告であるAさんは、S社に年俸制で採用されました。年俸は300万円で、それを12等分した額を毎月支払うという条件で両者は合意しましたが、雇用契約書には時間外割増賃金について詳しい記載がありませんでした。
3年後、残業の多い部署に異動となったAさんは、残業代の支払いをS社に求めます。
しかし、S社は要求に応じませんでした。
「年俸制を採用することが、ただちに時間外労働賃金を支払わなくてもよいということにはならない」というのが判決の主旨です。
使用者が、「残業手当込みの年俸で給与を支払っている」という認識であったとしても、基本給部分と時間外割増賃金部分との区別が明確でなく、割増賃金が労働基準法で定められた額に則っているか否かが計算によって確認できない場合、このような賃金の支払い方法は無効であるとしました。
そして、S社に対し、Aさんへの時間外割増賃金の支払いを命じました。
年俸制や固定残業制によって給与を支給している場合、「残業手当を支払わなくてもよい」と誤解されている方がいらっしゃいますが、どちらの制度も残業手当の支払いが免れるわけではありません。
このため、基本給部分と時間外割増賃金を支給明細書等で明確に区別しなくてはなりません。
取り決めにあたっては、法定の割増率を下回らないよう注意しましょう。
また、労働契約書等にその旨を明記しておくことで、双方の誤解やトラブルが避けられます。
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取締役 吉松 正人
(社会保険労務士)