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労災保険の概要
労働社会保険レポート!

今回は、基本的な知識の整理として「労災保険の概要」についてレポートします。

労災保険についてあまりご存知ない方はもちろん、既に制度内容をご存知の方は改めて確認して頂ければ幸いです。

目次

  1. 労災保険の目的
  2. 労災保険で行っている事業
  3. 適用範囲
  4. 暫定任意適用事業
  5. 業務災害について
  6. 通勤災害について

注) このレポートは 2011年1月23日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 労災保険の目的

労災保険とは、労働者災害補償保険法という法律に基づく制度で、業務上の災害や通勤災害により、労働者が

  1. 負傷した場合
  2. 疾病にかかった場合
  3. 障害が残った場合
  4. 死亡した場合 等

について、被災労働者やその遺族に対し保険給付を行うことを目的としています。

また、この他に被災労働者の社会復帰の促進、遺族の援護等も行っています。


2. 労災保険で行っている事業

労災保険で行っている事業をまとめると次のようになります。

(1) 保険給付

  • 業務災害に関する保険給付
  • 通勤災害に関する保険給付
  • 二次健康診断等給付

(2) 社会復帰促進等事業


3. 適用範囲

労災保険の適用範囲については、労働者を一人でも使用する事業は適用を受けることになり、保険料は全額事業主負担となります。

なお、保険制度への加入は労働者ごとでなく事業場単位で行われ、保険給付等の対象となる労働者には、正社員のみならずパート、アルバイトなども含まれます。


4. 暫定任意適用事業

労災保険は本来、強制的に適用されることになっていますが、次に掲げる事業については任意加入とされています。

  • 常時5人未満の労働者を使用する個人経営の農場
  • 常時5人未満の労働者を使用する水産業で総トン数5トン未満の漁船で災害発生の恐れが少ない河川、湖沼、特定の水面において主に操業するもの
  • 労働者を常時使用せず、かつ年間使用延労働者数が300人未満の個人経営の林業

5. 業務災害について

(1) 業務災害とは

業務災害とは、労働者が労働契約に基づいて使用者の支配下において労働を提供する過程で、業務に起因して発生した災害をいいます。

業務災害と認められるには「業務遂行性」が認められた上で「業務起因性」が認められなければなりません。

  • 業務遂行性・・・労働者が使用者の支配下にある状態のこと
  • 業務起因性・・・業務に起因すること

業務遂行性がなければ業務起因性も成立しませんが、業務遂行性があれば必ず業務起因性があるとは限りません。

(2) 業務上の判断基準

業務上と認められるのは、ケース別に次のような場合となっています。

a. 事業主の支配・管理下で業務に従事しているケース
  • 労働者が担当業務、事業主からの特命業務、突発事故に対する緊急業務等に従事している場合
  • 担当業務を行う上で必要な行為、作業中の用便、飲水等の生理的行為や作業中の反射的行為
  • その他労働関係の本旨に照らして合理的と認められる行為を行っている場合 等

一方、次のような場合には業務上とは認められないことがあります。

  • 就業中に私的行為を行い、又は恣意的行為をしていてそれらの行為が原因となって災害が発生した場合
  • 故意に災害を発生させた場合
  • 被災労働者が恨みなどにより、第三者から暴行を受けて被災した場合
b. 事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していないケース
  • 休憩時間に事業場構内で休んでいる場合
  • 附属寄宿舎を利用している場合
  • 事業主が通勤専用に提供した交通機関を利用している場合 等

これらの場合は、基本的に事業主の管理下にあるとみなされますので業務上と認められます。

ただし、休憩時間中や就業前後であっても私的行為については、原則として業務上と認められませんのでご注意ください。

例えば、休憩時間中に同僚と相撲をとっていて腰を痛めた場合や、キャッチボールの球を受け損なって負傷した場合等では、事業場の施設・設備又はその管理不備に起因することが明らかでない限り業務上とは認められません。

c. 事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事しているケース
  • 出張や社用による外出、運送、配達、営業などのため事業場外で仕事をする場合
  • 事業場外の就業場所への往復、食事、用便など事業場外での業務に付随する行為を行う場合 等

出張の場合は、私用で寄り道をした場合を除き、用務先へ向かって住居又は事業場を出たときから帰り着くまでの全工程にわたって業務上と認められます。

この場合は、事業主の施設管理下を離れてはいますが、労働契約に基づき事業主の命令を受けて仕事をしているわけですから、仕事の場所はどこであっても、途中で労働者が積極的な私的行為を行うなど特段の事情が無い限り業務遂行性が認められ、業務起因性についても特にこれを否定する事情が無い限り認められることになります。

〔参考〕 業務上疾病について

業務上の疾病は、労働基準法施行規則別表第1の2で定められているものに限られます。

これは、疾病は負傷等と違って、業務と業務以外の原因によって生ずるものとの判別が難しいからで、医学経験則上、業務との因果関係が確立されている疾病をあらかじめ定めているのです。


6. 通勤災害の認定

(1) 通勤の定義

「通勤」とは、労働者が就業に関し、次に掲げる移動を合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くとされています。

(2) 合理的な経路及び方法とは

合理的な経路及び方法とは、移動を行う場合に、一般に用いると認められる経路及び手段等をいい、必ずしも一つに限定されるものではありません。

例えば、勤務先に届出た経路及び方法は一般的に合理的な経路及び方法と認められますが、それ以外は認められないということではなく、例えば、道路工事や交通事情等により迂回した場合は合理的経路と認められます。

しかし、特段の理由もなく著しく遠回りしたり、運転免許を有しないのに自動車で通勤したりするのは、合理的な経路・方法とは認められません。

(3) 通勤途上の災害

通勤途上の災害は、本来業務上の災害とはいえませんが、業務との密接な関連があることから業務上の災害と同様に取り扱われ、業務災害に準じて保険給付が行われます。

ただし、業務災害に比べ次のような相違点がありますのでご注意ください。

  • 休業給付について、待機期間(3日間)に係る事業主の補償義務(労基法76条の休業補償)はない
  • 通勤災害による休業には、労基法19条の解雇制限はない
  • 療養給付については原則として200円の一部負担金が徴収される

(4) 逸脱・中断

通勤途中で就業又は通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれることを「逸脱」といい、通勤と関係のない行為をすることを「中断」といい、労働者が逸脱又は中断した場合には、逸脱・中断の間及びその後は通勤とはされません。

ただし、逸脱又は中断があっても、それが日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度で行う場合には、逸脱又は中断の間を除いて通勤とされます。

例えば、通勤途中で近くの公衆便所を使用したり、タバコや雑誌などの日用品を購入したりするなど些細な行為を行う場合がこれに当たりますが、厚生労働省令では次のように定めています。

  • 日用品の購入その他これに準ずる行為
  • 職業能力開発促進法第15条の6第3項、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育等
  • 選挙権の行使その他これに準ずる行為
  • 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
  • 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る)

〔参考〕 労災保険給付の概要

workers-insurance