中薗総合労務事務所

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うつ病等の精神障害と労災認定
労働社会保険レポート!

中薗総合労務事務所がお届けする労働・社会保険関連の 実務レポート100選 です。
※ 各レポートは、作成日(又は改訂日)現在の法令に基づき作成されていますのでご注意ください。

今回は、最近増加している「うつ病等の精神障害」と労災認定の関係についてレポートします。

そもそも労災保険給付の対象となる業務災害とは、労働者の業務上の負傷・疾病・障害又は死亡をいいます。

業務上とは、業務が原因となったということで、業務と傷病等との間に一定の因果関係が必要とされています。

これまで私傷病とされてきたうつ病等の精神障害も、近年では業務に起因する労働災害と認定されるケースが増えてきました。

うつ病などの障害になった際、どのように業務上の疾病として認定されるのか、その指針をご紹介します。

なお、この指針で対象とされるているのは、原則として国際疾病分類第10回修正(ICD-10)の「精神及び行動の障害」に分類される精神障害をいいます。

≪目次≫

  1. 精神障害の発病要因
  2. 精神障害の業務上・外判断の基本的な考え方
  3. 判断要件
  4. 判断指針で対象とされる精神障害とは?
  5. 業務による心理的負荷の評価方法
  6. 業務以外の心理的負荷の評価方法
  7. 固体側要因の評価方法
  8. 業務上・外の判断
  9. 自殺の取扱いについて

注) このレポートは 2007年12月25日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 精神障害の発病要因

労働者が発病する精神障害は、

  • 業務による心理的負荷
    事故や災害の体験、仕事の失敗、過重な責任、仕事の量・質の変化 等
  • 業務以外の心理的負荷
    私的な出来事、家族・親族の出来事、友人関係、金銭問題 等
  • 固体要因
    精神障害の既往歴、生活(社会適応状況)、アルコール等依存状況 等

が複雑に関係しあって発病するとされています。


2. 精神障害の業務上・外判断の基本的な考え方

業務上・外の判断に当たっては、

  • 精神障害の発病の有無、発病時期及び疾患名の確認
  • 業務による心理的負荷の強度の評価
  • 業務以外の心理的負荷の強度の評価
  • 固体要因の評価

について具体的に検討したうえで、次の判断要件により、総合的に判断されます。


3. 判断要件

次の1.~3.の要件をいずれも満たす精神障害が業務上の疾病として取り扱われることになります。

  1. 判断指針で対象とされる精神障害を発病していること
  2. 判断指針で対象とされる精神障害の発症前概ね6ヶ月の間に、客観的に当該精神障害を発病させる恐れのある業務による強い心理的負荷が認められること
    ※ 仕事の量・質、責任度、職場・取引先の人的環境、職場の物的環境 他
  3. 業務以外の心理的負荷により、当該精神障害を発病したとは認められないこと

4. 判断指針で対象とされる精神障害とは?

厚生労働省の判断指針で対象とされる精神障害を具体的に見ていくと、次の通りです。

  1. 症状性を含む器質性精神障害
  2. 精神作用物質使用による精神及び行動の障害
  3. 精神分裂病、分裂病型障害及び妄想性障害
  4. 気分(感情)障害  ★うつ病はここに分類されます
  5. 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
  6. 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群
  7. 成人の人格及び行動の障害
  8. 知的障害(精神遅滞)
  9. 心理的発達の障害
  10. 小児(児童)期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害、詳細不詳の精神障害

5. 業務による心理的負荷の評価方法

「職場における心理的負荷評価表」を用い、精神障害を発病させる恐れがある程度の心理的負荷であるかどうかが検討されます。

下記1.~7.に分類された「出来事」及び「出来事に伴う変化等」の心理的負荷を総合的に評価し、「弱・中・強」のいずれかと認められるかが判断されます。その際に、総合評価が「強」と認められれば精神障害を発病させる恐れがある程度の心理的負荷とされます。

  1. 事故や災害の体験
  2. 仕事の失敗、過重な責任の発生等
  3. 仕事の量・質の変化
  4. 身分の変化等
  5. 役割・地位等の変化
  6. 対人関係のトラブル
  7. 対人関係の変化

6. 業務以外の心理的負荷の評価方法

「業務以外の心理的負荷評価表」を用い、業務以外の心理的負荷の強度を評価し、「業務以外の強い心理的負荷がないか」が検討されます。

「職場における心理的負荷評価表」と同様、1.~6.に分類された「出来事」の具体的内容等を勘案のうえ、平均的な心理的負荷の強度が判断されます。

  1. 自分の出来事
  2. 自分以外の家族・親族の出来事
  3. 金銭関係
  4. 事件、事故、災害の体験
  5. 住環境の変化
  6. 他人との人間関係

7. 固体側要因の評価方法

固体側要因として、次の1.~4.の事項に考慮すべき点が認められ、それらが精神障害を発病させる恐れのある程度のものと認められるか否かについて検討されます。

  1. 既往症証
  2. 生活史(社会適応症)
  3. アルコール等依存状況
  4. 性格傾向

8. 業務上・外の判断

業務による心理的負荷、業務外の心理的負荷、及び固体側要因と労働者が発病した精神障害との関連性について調査した結果、業務による心理的負荷以外には、特段の心理的負荷、固体側要因が認められない場合で「職場における心理的負荷評価表」の総合評価が「強」と認められるときに業務上と判断されています。

しかし、業務による心理的負荷以外に、業務外の強い心理的負荷、著しい固体側要因が認められる場合には、「職場における心理的負荷評価表」の総合評価が「強」と認められる場合であっても、これらの精神障害の発病要因を検討し、業務による心理的負荷が精神障害の発病に有力な原因となっているか否かについて、さらに総合判断されることになります。


9. 自殺の取扱いについて

労災保険では、「故意」による災害は、保険給付の対象とされていません。

一般的に「自殺」は、本人の故意による死亡ですから基本的には保険給付の対象とならないのですが、うつ病等気分(感情)障害、重度ストレス障害などの精神障害では、その病態として自殺念慮が出現する蓋然性が高いと医学的に認められることから、これら精神障害が業務による心理的負荷によって発病したと認められた人が自殺を図った場合には、「精神障害によって、正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺を思い止まる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態」にあると推定され、業務起因性が認められることがあります。


あとがき

今回は、「精神障害等」の労災認定の指針についてご紹介しましたが、本来は労災認定の問題に発展する前に、メンタルヘルスケア等の対策を講じ、労災を未然に防ぐ努力が大切ではないかと思います。

「心の健康」に対する関心・興味を喚起させ、メンタルヘルスが重視される働き易い職場風土を築くことが、結果的に企業の生産性向上にもつながるのではないでしょうか・・・。


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