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労働者派遣法の改正(H27)
労働社会保険レポート!

2015年9月30日に労働者派遣法の一部が改正されました。

2012年の改正でも、多くの派遣会社や派遣先企業が変革を強いられましたが、今回の改正も業界に大きな影響を及ぼしてゆくと考えられます。

今改正では、企業の経済成長を促すために期間制限のルールを変更し、同一業務で派遣労働者を続けて受け入れられるようにする一方で、派遣労働者を守り、キャリアアップさせるための仕組みも設けられました。

また、許可制/届出制の区別を廃止し、許可制に統一することで、国は監視を強め、違法派遣を一掃して業界を健全化したい考えです。

目次

  1. 改正労働者派遣法の概要
  2. 届出制派遣事業の廃止
  3. 雇用安定措置の導入
  4. 期間制限ルールの変更
  5. キャリア形成支援制度の整備

注) このレポートは 2016年1月4日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 改正労働者派遣法の概要

改正労働者派遣法(以下、改正派遣法)のポイントは4つあります。

(1) 届出制派遣事業の廃止

届出制の特定労働者派遣事業を廃止し、全ての労働者派遣事業を許可制にしました。

現在の特定労働者派遣事業者も経過措置(3年)を経て許可制に移行することになります。

(2) 雇用安定措置の導入

継続就業見込みが一定期間以上となる派遣労働者に対し、派遣元が雇用安定措置を行う責務が課せられました。

(3) 期間制限ルールの変更

いわゆる専門26業務を廃止し、事業所単位では3年を超えても派遣労働者を受け入れられるようにした一方で、個人単位の制限を設け、同じ派遣労働者が同一の組織単位(課に相当)の業務に就くことを禁止しました。

(4) キャリア形成支援制度の整備

計画的な教育訓練の実施やキャリア・コンサルティングが派遣元の義務となりました。


それぞれの内容については、以下で詳しく述べていきます。


2. 届出制派遣事業の廃止

届出制の特定労働者派遣事業を廃止し、許可制の労働者派遣事業に一本化した最大の理由は、違法派遣を撲滅することです。

現状、一般労働者派遣事業の許可要件(基準資産額2,000万円、現預金額1,500万円)を満たせないがために、特定労働者派遣事業と偽り、実際には一般労働者派遣事業を行っている事業者も存在します。

この抜け道をふさぐために許可制とし、場合によっては許可の取消を行うことを可能としました。

これにより、現在特定労働者派遣事業を営む者は、3年間の経過措置の間に許可制に移行しなければなりません(ただし、小規模派遣元事業主には許可要件を緩和する配慮措置があります)。


3. 雇用安定措置の導入

改正前の派遣法では、派遣期間終了後の派遣労働者に対し派遣元は雇用継続を図る責務がなく、これが派遣労働者の雇用を不安定にさせる原因になっていたと言われています。

そこで改正派遣法では、継続就業見込みが一定期間以上であり、継続就業を希望する有期雇用派遣労働者に対し、以下のいずれかを実施する責務が課されました。

① 派遣先への直接雇用の依頼 【1年以上見込み】
② 新たな派遣先の提供 【3年見込み】
③ 派遣元での無期雇用 【3年見込み】
④ その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置 【3年見込み】
※【  】内は派遣先の同一組織単位での継続就業期間。

具体的には、派遣先の同一組織単位での継続就業期間が3年以上見込みの場合、①~④のいずれかを行う義務が生じます。

また、1年以上3年未満見込みの場合、①については義務、②~④については努力義務とされていますが、契約を更新し、3年以上に達する見込みが生じた時点で「3年以上見込み」と同じ扱いとなります。

一方、1年未満見込み(登録状態の者も含む)の場合はいずれの義務も努力義務もありませんが、契約を更新して1年以上の見込みが生じたときには「1年以上3年未満見込み」と同じ扱いに、3年以上の見込みが生じたときには「3年以上見込み」と同じ扱いとなります。


4. 期間制限ルールの変更

これまで、同一業務(係に相当)での派遣期間は原則1年、最長3年という期間制限が設けられ、他方、いわゆる26業務については期間制限がありませんでした。

改正派遣法では26業務を廃止し、事業所単位での受け入れを原則3年として、過半数組合等への意見聴取を行うことで3年を超えても派遣労働者を受け入れることを可能にしました。

一方で、同一組織(課に相当)では3年を超えて同じ派遣労働者を受け入れることはできず、別の課で起用するか、別の派遣労働者を受け入れなければなりません。

ただし、60歳以上の派遣労働者、無期雇用の派遣労働者であればこうした期間制限が対象外となります。


5. キャリア形成支援制度の整備

「派遣労働者は正規労働者に比べて職業能力形成の機会が乏しい」との見方から、改正派遣法では派遣労働者のキャリアアップ支援を派遣元に義務付けました。

これにより派遣元は派遣労働者に対し、
① 計画的な教育訓練
② 希望者に対するキャリア・コンサルティング
を実施する義務があります。

①については有給かつ無償で、おおむね1年間に8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要です(入職時の教育訓練を含む)。

②についてはキャリア・コンサルティングの知見を有する担当者による相談窓口を設置し、希望によってキャリア・コンサルティングを行います。


あとがき

企業の生産量や業務量は景気や季節などに大きく左右されがちです。

また、派遣労働者は正規労働者に比べて賃金が低い場合が多く、今回の改正は「恒久的に派遣労働者を受け入れたい企業の事情を汲んだものである」と一部の労働者からは不満の声があがっています。

一方、安定した雇用を望む派遣労働者に無期雇用への道が拓かれたとして歓迎する向きもあります。

ただし、派遣会社に無期雇用や許可制を強いるなど、派遣会社には負担の大きい改正内容となっており、中小派遣会社が大手に身売りするなど、業界の再編が進む可能性も指摘されています。

さらに詳しい情報を知りたい方や、相談をお望みの方は、お近くの労働局や社会保険労務士などにご相談ください。

執筆 : 社会保険労務士 吉松 正人