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一時帰休と休業手当
労働社会保険レポート!

今回は「一時帰休」と、その際に使用者に生じる「休業手当の支払義務」についてレポートします。

一時帰休とは、使用者が経営上の都合により労働者を自宅待機や教育訓練などの形で一定期間業務を休ませることをいいますが、そのような場合でも使用者には賃金(休業手当)の補償義務があります。

今回のレポートでは、休業手当の法律的な取り扱いについて、一般的にあまり知られていない部分にまで踏み込んで説明してみたいと思いますので、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。

目次

  1. 休業とは?
  2. 休業中の賃金支払義務
  3. 民法と労働基準法の違い
  4. 経営難による休業の場合

注) このレポートは 2008年12月29日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 休業とは?

「休業」とは、労働者が労働契約に従って労働を提供する準備をし、かつ労働するという意思があるにもかかわらず、使用者に労働の提供を拒否され、または不可能となった場合をいい、例えば、使用者から一方的に自宅待機を命じること(一時帰休)などが、この「休業」に該当します。


2. 休業中の賃金支払義務

休業中の賃金の支払義務に関しては、「民法」と「労働基準法」にそれぞれ規定があります。

(1) 民法

民法第536条の規定によると、次のように考えられます。

  • 休業の責任が労使のどちらにもないとき(天災事変など)
    使用者には、休業中の賃金支払義務はありません。(第1項)
  • 休業の責任が労働者にあるとき
    労働者の債務不履行と考えられ、使用者には、休業中の賃金支払義務はありません。
  • 休業の責任が使用者にあるとき
    労働者は、休業中の賃金全額について支払義務が生じます。(第2項)

(2) 労働基準法

労働基準法第26条の規定によると、休業の責任が使用者にあるときは、使用者に平均賃金の6割以上の休業手当の支払義務が生じます。

〔参考〕 使用者に責任があるとされる休業例

  • 工場の焼失
  • 機械の故障
  • 原材料不足
  • 資金難
  • 生産過剰による操業短縮
  • 監督官庁の勧告による操業停止  など
計画停電の場合(H23.3.15厚労省通達)

計画停電が行われた場合、原則としてその時間帯に対する休業手当の支払い義務はありませんが、計画停電以外の時間帯に使用者の責により休業を実施する場合は支払義務が生じる場合がありますのでご注意ください。

※ 詳細は、厚生労働省の通達を参照して下さい。

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3. 民法と労働基準法の違い

では、これらの法律の違いについて大きく2つに分けて解説します。

(1) 合意の有無

民法第536条の規定(賃金全額の支払義務)は、当事者の合意によりその適用を排除することができます。

一方、労働基準法の規定(6割以上の支払義務)は、当事者の合意によりその適用を排除することはできませんので、最低でも、平均賃金の6割は支払わなければならないことになります。

このように、使用者の責任により休業させる場合には、最低でも平均賃金の6割の休業手当の支払義務があり、さらに民法の規定を排除する特約が締結されていない場合には、賃金全額について支払義務が生じる場合があるわけです。

(2) 使用者の責任範囲

労働基準法の方が民法より広く、「企業経営者として不可抗力を主張しえない一切の事由」を含むとされており、民法の「故意・過失または信義則上これと同視すべき事由」に限られず、「使用者側に起因する経営・管理上の障害」を広く含むと考えられています。
(最高裁昭和62.7.17 ノース・ウエスト航空事件)

なお、使用者に、民法の規定に基づく全額支払義務があるかどうかの判断は、一般的には民事訴訟の手続を踏んで行われています。

それでは、労働者の保護としては十分でないケースが出てくる危険性があるということで労働基準法では、第26条の規定が設けられています。


4. 経営難による休業の場合

経営難による休業については、企業経営上、当然予見できるような休業については、原則として、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」に該当し、平均賃金の6割以上の休業手当の請求権が発生すると考えられます。

なお、使用者の故意や過失により「仕事が減った」場合には、民法の規定により賃金全額の請求権が生じることも考えられますが、民法の適用を排除するような特約が締結されていれば話は別ですので、その点よく確認しておく必要があるでしょう。

使用者の中には、いかなる場合も平均賃金の6割を支給すればよいと誤解されている方もいますが、就業規則や労働協約等に特段の定めがない場合は、全額について支払義務が発生する場合もありますので十分注意が必要です。


あとがき

通常、休業手当は法令に基づき使用者から労働者へ支払われるものですが、支払いがない場合は、労働者から使用者へ請求するケースが出てきます。

その方法としては、口頭のほか、

  1. 配達証明付きの内容証明郵便により文書で請求する
  2. 支払督促、民事調停、少額訴訟など簡易裁判所を利用する
  3. 労働基準監督署に申告して指導してもらう

などがあります。

このような状態になると個別労働紛争ということになってしまうわけですが、今回のレポートを参考にして頂ければ、少なくともそのようなトラブルが未然に防げるのではないかと考えています。

言うは易しで、実際は頭ではわかっていてもなかなか行動が伴わないことがあるかも知れません。

しかし、これらの対応を誤ると、かえって事態を大きく、ややこしくしてしまいますので、その点よくよくご注意いただければ幸いです。

なお、賃金請求権についての消滅時効は、2年間となっています。(労働基準法第115条)