社会保険労務士 尼崎・神戸・大阪 ‐ 中薗総合労務事務所

人事労務の問題解決! 尼崎 → 姫路・神戸・西宮・伊丹・大阪・京都 etc

TEL. 06-6430-6318

〒660-0054 兵庫県尼崎市西立花町3‐4‐1 パークビル201

専門業務型裁量労働制
労働社会保険レポート!

今回は、弊所のクライアント様でも導入の増えている「専門業務型裁量労働制」についてレポートします。

まずは本文を読んで当制度の概要をある程度つかんで頂いた後で、実際に制度を導入するうえでの注意点について述べたいと思います。

目次

  1. 専門業務型裁量労働制とは?
  2. 専門業務型裁量労働制の対象業務
  3. 制度導入のための手続
  4. 労使協定例

注) このレポートは 2015年3月6日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 専門業務型裁量労働制とは?

専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。


2. 専門業務型裁量労働制の対象業務

専門業務型裁量労働制は、研究開発系、IT系、クリエイティブ系、金融・士業などの業務で導入が可能となっており、具体的には、下記の19業務に限り、事業場の過半数労働組合又は過半数代表者との労使協定を締結することにより導入することができます。

  1. 新商品もしくは新技術の研究開発又は人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。(7.において同じ。)の分析又は設計の業務
  3. 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務又は放送法第2条第4号に規定する放送番組もしくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律第2条に規定する有線ラジオ放送もしくは有線テレビジョン放送法第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」という。)の制作のための取材もしくは編集の業務
  4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  5. 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  6. 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
  7. 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案もしくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
  8. 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
  11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 学校教育法に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
  13. 公認会計士の業務
  14. 弁護士の業務
  15. 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
  16. 不動産鑑定士の業務
  17. 弁理士の業務
  18. 税理士の業務
  19. 中小企業診断士の業務

なお、これら19業務については狭く解釈されることがあり、例えば、建築設計はOKでも、造園設計はNGというケースがありました。

従って、判断に悩む場合は、制度導入の準備を進める前に、管轄の労働基準監督署に自社の業務が対象になるのかどうかを確認されるとよいでしょう。


3. 制度導入のための手続

制度の導入に当たっては、原則として次の事項を労使協定により定めたうえで、「様式第13号」により、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。

  1. 制度の対象とする業務
  2. 対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
  3. 労働時間としてみなす時間
  4. 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
  6. 協定の有効期間(※3年以内とすることが望ましい。)
  7. 4.及び5.に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること
form13

4. 労使協定例

以下に、厚生労働省HPに掲載されている労使協定の例をご紹介します。

○○株式会社と○○労働組合は、労働基準法第38条の3の規定に基づき専門業務型裁量労働制に関し、次のとおり協定する。

第1条(対象従業員)
本協定は、次の各号に掲げる従業員(以下「対象従業員」という。)に適用する。
(1) 本社研究所において新商品又は新技術の研究開発の業務に従事する従業員
(2) 本社附属事務処理センターにおいて情報処理システムの分析又は設計の業務に従事する従業員

第2条(専門業務型裁量労働制の原則)
対象従業員に対しては、会社は業務遂行の手段及び時間配分の決定等につき具体的な指示をしないものとする。

第3条(みなし労働時間)
対象従業員が、所定労働日に勤務した場合は、就業規則第○条に定める就業時間に関わらず、1日9時間労働したものとみなす。

第4条(時間外手当)
みなし労働時間が就業規則第○条に定める所定労働時間を超える部分については、時間外労働として取り扱い、賃金規定第○条の定めるところにより割増賃金を支払う。

第5条(休憩、休日)
対象従業員の休憩、所定休日は就業規則の定めるところによる。

第6条(対象従業員の出勤等の際の手続)
対象従業員は、出勤した日については、入退室時にIDカードによる時刻の記録を行わなければならない。
2  対象従業員が、出張等業務の都合により事業場外で従事する場合には、事前に所属長の了承を得てこれを行わなければならない。所属長の了承を得た場合には、第3条に定める労働時間労働したものとみなす。
3  対象従業員が所定休日に勤務する場合は、休日労働協定の範囲内で事前に所属長に申請し、許可を得なければならない。所属長の許可を得た場合、対象従業員の休日労働に対しては、賃金規定第○条の定めるところにより割増賃金を支払う。
4  対象従業員が深夜に勤務する場合は、事前に所属長に申請し、許可を得なければならない。所属長の許可を得た場合、対象従業員の深夜労働に対しては、賃金規定第○条の定めるところにより割増賃金を支払う。

第7条(対象従業員の健康と福祉の確保)
対象従業員の健康と福祉を確保するために、次の措置を講ずるものとする。
1  対象従業員の健康状態を把握するために次の措置を実施する。
  イ  所属長は、入退室時のIDカードの記録により、対象従業員の在社時間を把握する。
  ロ  対象従業員は、2ヶ月に1回、自己の健康状態について所定の「自己診断カード」に
    記入の上、所属長に提出する。
  ハ  所属長は、ロの自己診断カードを受領後、速やかに、対象従業員ごとに健康状態等に
    ついてヒアリングを行う。
2  使用者は、1の結果をとりまとめ、産業医に提出するとともに、産業医が必要と認めるときには、次の措置を実施する。
  イ  定期健康診断とは別に、特別健康診断を実施する。
  ロ  特別休暇を付与する。
3  精神・身体両面の健康についての相談室を○○に設置する。

第8条(裁量労働適用の中止)
前条の措置の結果、対象従業員に専門業務型裁量労働制を適用することがふさわしくないと認められた場合又は対象従業員が専門業務型裁量労働制の適用の中止を申し出た場合は、使用者は、当該労働者に専門業務型裁量労働制を適用しないものとする。

第9条(対象従業員の苦情の処理)
対象従業員から苦情等があった場合には、次の手続に従い、対応するものとする。
1  裁量労働相談室を次のとおり開設する。
  イ  場所○○労働組合管理部
  ロ  開設日時毎週金曜日12:00~13:00と17:00~19:00
  ハ  相談員○○○○
2  取り扱う苦情の範囲を次のとおりとする。
  イ  裁量労働制の運用に関する全般の事項
  ロ  対象従業員に適用している評価制度、これに対応する賃金制度等の処遇制度全般
3  相談者の秘密を厳守し、プライバシーの保護に努めるとともに、必要に応じて実態調査を行い、解決策等を労使に報告する。

第10条(勤務状況等の保存)
使用者は、対象従業員の勤務状況、対象従業員の健康と福祉確保のために講じた措置、対象従業員からの苦情について講じた措置の記録をこの協定の有効期間の始期から有効期間満了後3年間を経過する時まで保存することとする。

第11条(有効期間)
この協定の有効期間は、平成○年○月○日から平成○年○月○日までの○年間とする。

平成○年○月○日

○○株式会社  取締役人事部長  ○○○○ 印
○○労働組合  執行委員長        ○○○○ 印


あとがき

改めてこの制度が設けられた背景を述べると、通常の労働時間管理に適さない業務(限定19業務)については、業務遂行にかかる時間配分の決定を労働者に委ね、実際の時間に関係なく労使で定めた時間を労働したものとみなした方が労使にとって合理的で、かつ実情にも即していると考えられているからです。

つまり、これら19業務については、必ずしも「労働時間=労働対価」ではないということが言えます。

この制度を導入することで時間外労働の問題が解消されることがありますが、実際の導入に当たっては、次のような注意点もあります。
使用者側 → 時間外労働の削減を目的としない
労働者側 → 自己責任で業務を遂行し、時間管理が行えることが前提となる

つまり、使用者側は、通常だとどう考えても毎日10時間は掛かるような仕事をこの制度を導入することによって1日9時間労働したものとみなすというような運用は行わないということです。

ちなみに、弊所のクライアント様では前年1年間の労働時間実績をきちんと算出したうえで、みなし労働時間数を定めておられていたところもあります。

また、労働者側も会社や上司からの指示に基づいて業務を遂行するわけではありませんので、自己責任で管理できないと時間にルーズになったり、かえって仕事の効率が悪くなったり、ひどい場合には自身の健康状態にも支障をきたすということになり兼ねません。

その辺は、きちんと「大人としての考え方」を持っていなければ、制度の導入の意義や効果が無くなってしまうのです。

これらの問題点をクリアできるということであれば、この制度は大変便利で使い勝手のよい制度になり得ますので、ぜひ導入を検討されてみてはいかがでしょうか・・・?