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事業場外のみなし労働
労働社会保険レポート!

今回は、「事業場外労働のみなし労働時間制」についてレポートします。

昨今、労働環境の変化(ホワイトカラーの増大など)に伴って、労働時間管理は難解で煩雑なものとなってきています。

労働時間管理については、労働基準法や行政通達などによって細かい決まりごとがたくさんあるのですが、あまり知られていなかったり、誤って理解されていたりして労働トラブルに発展してしまうケースがよく見受けられます。

今回は、そんな中で、いわゆる外回りの営業職など、労働時間の把握が困難で算定し難い場合に、実務上どのように取り扱ったらよいかについて「みなし労働時間制」という制度をご紹介したいと思います。

この制度は、適正に運用すると労働時間管理を容易にしてくれる便利な制度なのですが、運用を間違えると、後になって裁判で多額の残業代の支払いが命じられるといった例もあります。

事業場外での労働が多いという従業員がたくさんいらっしゃる事業所様におかれましては、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

目次

  1. 事業場外労働のみなし労働時間制とは?(原則)
  2. 所定時間を超える労働が通常必要となる場合
  3. 算定した労働時間が法定労働時間を超える場合
  4. みなし労働時間制が適用されない場合

注) このレポートは 2010年11月4日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 事業場外労働のみなし労働時間制とは?(原則)

事業場外労働のみなし労働時間制とは、外回りの営業職のように労働時間の全部又は一部を事業場外で労働した場合において、使用者の指揮監督が及ばないため労働時間の把握や算定が困難なときは、原則として「所定労働時間労働したものとみなす」とする制度で、労働基準法によって定められています。

つまり、この制度を採用した場合は、実労働時間にかかわらず、原則として所定労働時間を労働したものとして、労働時間を算定することができるようになります。


2. 所定時間を超える労働が通常必要となる場合

業務を遂行するために、所定労働時間を超えて労働することが通常必要となるケースが考えられますが、このような場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされます。

この「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」とは、平均的にみれば業務を遂行するのに客観的に必要とされる時間をいい、労働基準法第38条の2では、「所定労働時間を超えて労働することが通常必要となるケースで労使協定を締結した場合には、その協定で定めた時間労働したものとみなす」との規定が設けられています。

ちなみに、この労使協定は所轄労働基準監督署長に届け出なければなりませんが、協定で定める時間が法定労働時間(一般的な事業所では1日8時間)以下である場合には、届け出る必要はありません。

なお、労使協定を定めた場合において事業場内での労働が混在しているケースでは、「事業場内の労働時間は別途把握しておき、労使協定している事業場外の労働時間と合算したものをその日の労働時間としなければならない」ことがありますので注意が必要です。(昭和63.3.14基発第150号参照)

これは、労使協定で定める労働時間(=当該業務の遂行に通常必要とされる時間)とは、あくまで把握・算定が困難な事業場外での労働時間のことを指しており、合算すると所定労働時間を超えるのに算定可能な事業場内での労働時間を含めて所定労働時間労働したものとみなすとするのはおかしいという考え方があるからです。


3. 算定した労働時間が法定労働時間を超える場合

みなし労働時間制の適用により算定される労働時間が、法定労働時間を超える場合には時間外労働をすることになりますから、法定労働時間を超えた部分については、別途、割増賃金の支払いが必要となります。


4. みなし労働時間制が適用されない場合

事業場外で労働した場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及ぶ場合には、労働時間の算定が可能ですので、みなし労働時間制の対象とはなりません。

つまり、以下のように、使用者が定期的に連絡を義務づけたり、指示をしたりして、業務の進捗状況が把握できるような場合であるならば、労働時間の算定が十分可能と考えられ、この制度の適用はできません。

  • 何人かのグループで、事業場外で業務に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
  • 事業場外で労働する場合、携帯電話、無線、ポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
  • 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおり労働し、その後事業場に戻る場合

あとがき

最近は通信手段が発達し、例えば従業員が携帯電話を常に所持しながら業務をしているという姿はごく当たり前のものとなっています。

そんな中で、今回ご紹介した「事業場外労働のみなし労働時間制」を採用するためのポイントは、使用者の指揮監督が及ぶのかどうかという点にあります。

言い換えると、この制度が採用できるのは、携帯電話等は常に所持していたとしても、現場での実際の業務遂行は従業員の裁量に委ねられており、使用者が逐一指示命令や管理監督することが困難なケースに限られてくることになります。

最近では旅行ツアーの添乗業務をめぐって裁判で争われたケースがありますが、問題となったのは、事業主側の指揮監督が及ぶにもかかわらず、実態を曲げて残業代の抑制手段としてこの制度を採用してしまったことだと言えます。

指揮監督が及ぶか否かについては実際には判断が難しい、ある意味グレーな部分ではありますが、問題が起きたときには、必ず実態に即して運用されていたかどうかが問われますので、この制度の採用を検討される場合は、その点十分ご留意いただければと思います。