中薗総合労務事務所

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高年齢者雇用安定法の改正(H24)
労働社会保険レポート!

労働・社会保険関連の 実務レポート100選 で、目指すは 1テーマを5分で理解できる! です。
※ 各レポートは、作成日(又は改訂日)現在の法令に基づき作成されていますのでご注意ください。

今回は、平成24年改正(平成25年4月1日施行)の「高年齢者雇用安定法」についてレポートします。

今回(平成24年)の法改正は、平成16年に続く改正となりますが、当時の内容を前提知識として押さえておかなければ理解しづらいところです。

映画で言えば、パート1を見ていなければ、パート2はわかり難いといった感じです。

そこで、まずは平成16年の改正ポイントについて解説した後、今回の法改正について解説するという流れをとっています。

今回のレポートは平成24年10月~平成25年3月にかけて行ってきたセミナーのレジメをベースに重要なエキスを抽出して作成してみました。

高年齢者雇用にまつわるトラブル回避という観点から読者の皆様の一助となれば幸いです。

≪目次≫

  1. 前提知識の整理~平成16年の高年齢者雇用安定法改正内容~
  2. 平成24年の法改正(平成25年4月1日施行内容)について
  3. 補足事項

注) このレポートは 2013年3月12日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 前提知識の整理~平成16年の高年齢者雇用安定法改正内容~

(1) 高年齢者雇用確保措置の義務化

高年齢者雇用安定法におけるポイントは第9条といえますが、平成16年の改正法により次の3つの「高年齢者雇用確保措置」が義務化されました。

第9条

定年の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置のいずれかを講じなければならない

  1. 当該定年の引き上げ
  2. 継続雇用制度の導入
  3. 当該定年の定めの廃止

≪上記1. を採用する場合≫
定年年齢を65歳以上に引き上げる(延長する)必要がありました。

≪上記2. を採用する場合≫
従業員が何らかの形で65歳まで引き続き働くことの出来る仕組み(再雇用制度や勤務延長制度)を導入する必要がありました。

〔用語解説〕
再雇用制度とは・・・定年に達した従業員を一度退職させ、再度雇用する制度
勤務延長制度とは・・・従業員が定年年齢を迎えても退職させず、引き続き雇用し続ける制度

≪上記3. を採用する場合≫
定年そのものの定めを廃止する必要がありました。

(2) 定年延長・継続雇用制度の段階的引き上げ(緩和措置1)

平成16年の法改正では、事業主がいきなり65歳まで定年を延長することや、65歳までの継続雇用制度を導入することは厳しすぎるため緩和措置が用意され、次のスケジュールに沿って継続雇用義務が段階的に引き上げられることとなりました。

〔参考〕 引上げスケジュール
平成18年4月~平成19年3月 62歳定年又は62歳までの継続雇用制度の導入
平成19年4月~平成22年3月 63歳定年又は63歳までの継続雇用制度の導入
平成22年4月~平成25年3月 64歳定年又は64歳までの継続雇用制度の導入
平成25年4月~ 65歳定年又は65歳までの継続雇用制度の導入

(3) 継続雇用制度の対象者を限定できる(緩和措置2)

平成16年の法改正では、もう一つの緩和措置が用意されていました。それは、事業主側は継続雇用の対象となる従業員を再雇用する際に一定の基準を定め、この基準に適合した従業員だけを再雇用するというものでした。

また、この基準は、原則として従業員の過半数を代表する者との書面による協定によって定めることが必要とされていますが、労使協定を締結するために努力したが、協議不調に終わった場合は、代わりに就業規則により基準を定めることが認められていました。

ただし、この代替措置は、改正法施行から大企業は3年間(平成21年3月31日まで)、中小企業は5年間(平成23年3月31日まで)の時限措置となっていたため、現在は認められていません。


2. 平成24年の法改正(平成25年4月1日施行内容)について

(1) 継続雇用制度の対象者を限定できる(緩和措置2)の廃止

平成16年の法改正では基準に適合しない従業員の再雇用を拒否し、再雇用を希望する者全員を継続雇用の対象とする必要がなかったのですが、平成24年の法改正では、この緩和措置が廃止されることとなりました。

これにより事業主は、平成25年4月1日以降に継続雇用の対象となる従業員が希望すれば、その全員を再雇用しなければならないこととなりました。 ※下記〔経過措置〕に要注意!

〔経過措置〕※重要※
ただし、これには経過措置が設けられ、継続雇用の対象となる従業員の再雇用について何らかの基準を定めていた場合は、次の期間について、指定された年齢以上の従業員に対して、引き続きその基準を適用できる(有効とする)ものとされました

平成25年4月1日~平成28年3月31日まで 61歳以上の者
平成28年4月1日~平成31年3月31日まで 62歳以上の者
平成31年4月1日~平成34年3月31日まで 63歳以上の者
平成34年4月1日~平成37年3月31日まで 64歳以上の者

例えば、平成25年4月1日~平成28年3月31日までの間は、61歳以上の従業員を再雇用する場合は、これまで労使協定よって定めた継続雇用の対象となる基準が引き続き適用できます(有効となります)。希望者全員を再雇用する必要はありません。

つまり、平成25年4月1日の時点で、既に60歳定年を迎え再雇用されているような従業員については、次回も継続雇用の対象とするかどうかについて、労使協定で定めた基準に従って判定できます。

逆に言えば、平成25年4月1日以降に、新たに60歳の定年を迎えるような従業員については、最初の再雇用契約の際は労使協定で定めた基準を適用できない(無効である)ため希望者全員を再雇用する必要があります。そして、2回目以降の再雇用契約について、当該契約締結の時期とその従業員の年齢に応じて、労使協定で定めた基準を適用できるか否かが決まります。

この期間と年齢は、昭和28年4月2日生まれ以降の男性から老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢が61歳へ引き上げられることに関係しています。60歳から老齢厚生年金が支給されない従業員については年金が支給されるまでの間、事業主側に希望者全員の再雇用を義務づけ、収入に空白期間が生じることの無いようにしています

〔まとめ〕

  • 老齢厚生年金の支給開始年齢に達する前は、希望者全員を再雇用する。
  • 年金支給開始年齢に達した後に再雇用する際は、労使協定によって定めた基準を適用することができ、場合によっては再雇用契約を拒否できる。

(2) 再雇用する企業の範囲の拡大

平成24年の法改正により、この継続雇用制度には、定年を迎えた自社の従業員を関係グループ企業等(特殊関係企業)で引き続き雇用する契約を結ぶ措置も含まれることとなりました。

(3) 義務違反の事業主に対する公表規定の導入

これまでは高年齢者雇用確保措置に違反している事業主に対しては、厚生労働大臣が必要な指導、助言をし、それでも違反している状態が続けば、高年齢者雇用確保措置を講ずべきことが勧告されるというレベルにとどまっていました。

平成25年4月1日からは、この勧告に従わない事業主については、厚生労働大臣はその旨を公表することができることになり、事業主名が公表されるという社会的制裁措置規定が設けられました。


3. 補足事項

(1) 「継続雇用の対象となる従業員の基準」について

継続雇用の対象となる従業員の基準については、厚生労働省通達において具体的な事例が示されています。

〔望ましいとされる例〕

意欲、能力等をできる限り具体的に測るものであること
従業員自ら基準に適合するか否かを一定程度予見することができ、到達していない従業員に対して、能力開発等を促すことができるような具体性を有するものであること
必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること
事業主や上司等の主観的な選択ではなく、基準に該当するか否かを従業員が客観的に予見可能で、該当の有無について紛争を招くことのないよう配慮されたものであること

具体的には・・・?

適切な例
『社内技能検定レベルがAレベル』
『営業経験が豊富な者(全国の営業所を3カ所以上経験)』
『過去3年間の勤務評定が平均以上の者』(勤務評定が開示されていること)
不適切な例
『会社が必要と認めた者に限る』
『上司の推薦がある者に限る』
『男性(又は女性)に限る』
『老齢厚生年金(定額部分)を受給していない者に限る』
『組合活動に従事していない者に限る』

(2) 継続雇用後の労働条件について

厚生労働省によれば、継続雇用制度や定年の引上げ・廃止といった高年齢者雇用確保措置によって確保されるべき雇用の形態については、必ずしも従業員の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めているものではありません

そして、高年齢者の安定した雇用を確保するという法の趣旨を踏まえたものであれば、常用のみならず、短時間勤務や隔日勤務なども含めて多様な雇用形態を含むものであるとしています。

つまり、継続雇用後の労働条件については、法の趣旨を踏まえたものであれば、雇用に関するルールの範囲内で、労働時間、賃金、待遇などについて、事業主と従業員の間で自由に決めることが出来るわけです。

60歳定年制を定めている事業主が継続雇用制度の一つである「再雇用制度」を採用した場合、従業員は60歳で一度定年退職となり、その後、事業主と新しい労働条件を結び直すことになります。新しく労働契約を結びますから、過去の賃金、役職、待遇等はご破算となり、労働条件の提示をもう一度最初から行うこととなります。

高年齢者雇用安定法は、あくまで65歳までの雇用の場を提供することを求めており、新たな労働条件が従業員の希望に合わず、結果的にその従業員が、その後の再雇用を拒んだとしても、法違反とはなりません。


あとがき

よくお受けする質問に「法律に基づいて継続雇用している者を解雇できるのですか・・・?」というものがあります。

解雇は事業の継続が困難になったり、本人に何らかの問題があるときに行われたりしますが、ここには60歳定年前、60歳定年後(継続雇用者)を区別する決まりはありません。

つまり、継続雇用の仕組みは設けていても、就業規則に定めている解雇の要件に当てはまれば、継続雇用者といえども解雇の可能性はあり得るということになります。(あくまで、解雇権の濫用に当たらなければですが・・・。)

以上、ご参考まで。


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