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労働契約法のポイント(H20・H25)
労働社会保険レポート!

このレポートは、2008(H20)年3月施行の「労働契約法」のポイントについて作成され、その後、2013(H25)年に大きな法改正が行われましたので、まず法改正情報についてご参照ください。

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~以下は、初稿の内容です。~

皆様ご存知のように、昨今、労働関係紛争は増加の一途を辿っています。

しかし、これまでは紛争を解決するための労働契約についての民事的なルールをまとめた法律が存在していませんでした。

その都度、労使間において裁判等で争われ、判断されてきたというのが実情です。

そこで、これまでに蓄積された一定の判断基準をまとめる形で制定されたのが「労働契約法」ということになり、つまり、基本的なルールがようやく明らかにされたのです。

労働契約法は全部で19条からなる法律で、条文数としては決して多くはありませんが、この先、労働紛争関係が起きた際には解決に向けた一定の判断基準を示す重要な法律になってくると思われます。

したがって、経営者・人事労務担当者の方は十分理解しておく必要があります。

本レポートは、主に条文の流れに沿って、特に重要と思われるポイントを中心に解説を試みましたので、ぜひ参考にして下さい。

目次

  1. 総則におけるポイント
  2. 労働契約の成立及び変更におけるポイント
  3. 労働契約の継続及び終了におけるポイント
  4. 期間の定めのある労働契約におけるポイント

注) このレポートは 2008年6月8日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 総則におけるポイント

まず、「第1章 総則」におけるポイントについて3つご紹介します。

(1) 労働契約法における「労働者」とは?(第2条第1項)

まず条文の内容は『この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。』とされており、つまりは使用者の指揮命令のもとで働き、その対価として賃金を受ける場合は「労働者」とみなされることになるわけです。

ですので、形式的には「請負」「委任」などの形をとっていたとしても、実態が使用者の指揮命令のもとで働き、その対価として賃金を受けているような場合は「労働者」だと判断されるケースが考えられます。

(2) 労働契約の内容についての書面の作成(第4条第2項)

労働契約法においては、労働契約は労使間の「合意」によって成立するという合意原則の立場をとっています。

ですので、労働契約書などの書面がなかったとしても契約自体は成立するわけですが、その内容が書面に残っていない(いわゆる口約束である)ために、後日紛争に発展してしまうケースがよくあります。

そこで、今回の法律では『できる限り書面により確認するものとする』という努力義務を課しています。

(3) 労働者への安全配慮義務(第5条)

使用者が労働者に対する安全配慮義務を怠ったがために、後日、過労死などの労災認定の問題にまで発展してしまうケースがよくあります。

そこで、今回の法律では『使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。』という具合に、使用者の安全配慮義務が明文化されることとなりました。


2. 労働契約の成立及び変更におけるポイント

実は、ここからがこの法律における核心的部分であると考えられており、重要なポイントとしては3つあると考えています。

(1) 労働契約の成立(第6条・第7条)

先ほども述べましたように、この法律における労働契約成立に関する基本的な考え方は、第6条において「合意原則」が示されており、たとえ労働契約書などの書面がなかったとしても契約自体は成立するものとされています。

さらに第7条においては『(・・・前略)使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。』とされており、つまり、労働契約は個別に定めていなくても就業規則が合理的な内容であり、労働者に周知されていればその就業規則で包括できるというふうになっています。

ただし、就業規則の内容を下回らない範囲で、個別に合意した部分については、そちらが優先されることになります。

(2) 労働契約の内容の変更(第8条)

この法律では、労働契約を変更する場合においても「合意原則」の立場をとっており、基本的には労使間の合意がなければ変更が許されないとされています。

(3) 就業規則による労働契約の内容の変更(第9条・第10条)

就業規則を変更することによって労働契約の内容である労働条件を変更する場合(不利益に変更する場合を含む)においても、やはり基本的には労使間の「合意」が必要とされています。

ただし、使用者が変更後の就業規則を労働者に周知し、かつその内容が、

  1. 労働者の受ける不利益の程度
  2. 労働条件の変更の必要性
  3. 変更後の就業規則の内容の相当性
  4. 労働組合等との交渉の状況
  5. その他の就業規則の変更に係る事情

に照らして「合理的」なものであるときは、不利益な変更であっても許される場合があります。

かつては、ここが裁判でもよく争われていたところになるのですが、今までの判例の考え方が法律に反映(明文化)されることとなりました。

なお、合理的なものであるか否かの立証責任(説明責任)は使用者側にありますので、ご注意ください。


3. 労働契約の継続及び終了におけるポイント

ここでもポイントは3つ挙げられます。

(1) 出向(第14条)

ここでいう出向はいわゆる「在籍型」の出向を指しているのですが、その出向命令が、

  1. 必要性
  2. 対象労働者の選定に係る事情
  3. その他の事情

に照らして、その権利を濫用(らんよう)したものと認められる場合には無効とするとされていますのでご注意ください。

(2) 懲戒(第15条)

よく就業規則において「懲戒」について定めている企業は多いと思われますが、懲戒しようとする労働者の行為の性質や態様等を判断して、客観的に合理的な理由を欠き、かつ社会的に見ても相当であるとは言えないような場合は、その懲戒は無効とされることがありますのでご注意ください。

(3) 解雇(第16条)

解雇においても上記(2)と同様に、客観的に合理的な理由を欠き、かつ社会的に見ても相当であるとは言えないような場合は、権利の濫用ということで無効になることがありますのでご注意ください。

ちなみに、この内容は、以前は労働基準法において定められていたものが承継される形となっています。


4. 期間の定めのある労働契約におけるポイント

ここは、もともと条文が第17条の一つしかありませんのでその内容をまとめてみます。

まず当然のことですが、使用者は労働契約において期間を定めたときは、やむを得ない場合でなければ、その契約期間が満了するまでは労働者を解雇することができません。

また、契約期間を定める場合においても『労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない』という配慮義務が課せられることになりました。


あとがき

この法律には、労働紛争の発生を防止しようとの主旨があります。

したがって、使用者が、労働者に不利となるようなことを一方的に決めてしまうのを阻止しようとの色合いが濃くなっています。

しかし、一方では使用者側にも保護されるべき権利はありますので、例えば、就業規則の不利益変更等についても「合理的な理由がある場合には許される」といった側面もあります。

いずれにしても、合理的な理由に当るかどうかの判断等は、やはりグレーゾーンと言えますので、判断に苦しむ場合は、お近くの専門家に相談しましょう。