中薗総合労務事務所 ‐ 兵庫県 尼崎市

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ライバル会社への転職
労働社会保険レポート!

終身雇用制の崩壊とともに、転職は一般的に珍しいことでありません。

今回は、弊所に転職に関する労働トラブル相談が多く寄せられている現状に照らして、従業員が競業関係にあるライバル会社へ転職する際の法律的な問題点についてレポートしてみたいと思います。

目次

  1. 競業避止義務と誓約書の意義
  2. 退職後に起こる問題

注) このレポートは 2007年4月17日現在 の法令に基づき作成されています。


1. 競業避止義務と誓約書の意義

競業避止義務とは、「使用者と競合する業務を行わない義務」のことですが、在職中と退職後ではその義務の課せられ方が違うという点を押さえておく必要があります。

(1) 在職中

まず、在職中の従業員には、使用者の正当な利益を侵害してはならいという「忠実義務」が課せられており、それに付随する義務として「競業避止義務」を負うと考えられています。

これは、就業規則や個別の特約の有無に関係なくそのように考えられています。

したがって、在職中の従業員は、当然その会社の利益を最大化することが求められますので、ライバル会社へ加担するような行為は一切認められないということになります。

(2) 退職後

一方、退職後の競業避止義務については、就業規則や労働契約などによりあらかじめ明示されていなければ、その存在を主張することは困難であると考えられています。

したがって、最低限、就業規則などには規定しておく必要があります。

ただ、就業規則などで退職後の行動まで制約できるのか? という考え方もあり、就業規則などに退職後の競業避止義務を記載していればまったく問題がないかというと、そういうわけでもありませんので注意が必要です。

(3) 誓約書

最近、退職時に秘密保持や競業避止義務に関する誓約書の提出を求める会社が増えてきています。

これについては、就業規則にその趣旨の規定があり、誓約書の内容がそれと同趣旨であれば提出の義務があると考えられていますが、就業規則にその趣旨の規定がなかったり、就業規則の規定以上に厳しい内容を課す場合は提出義務はないと考えられています。

(4) まとめ

この件の問題点は、結局、

  • 退職した社員にも職業選択の自由があり、また自由競争の原理からすると、退職後の行動まで以前勤務していた会社に制限を加えられるのはおかしい

という考え方と、

  • 自由競争の原理があるといっても、退職者に無制限にそれを許すと会社側の得られるべき利益が不当に侵害さてしまう

という考え方がぶつかりあって起きていると言えます。

過去の裁判例などを見ると、退職した社員に自由競争の原理を認めている反面、会社側にも正当と認められる範囲においては一定の保護が与えられています。

したがって、例えば10年間や永久にライバル会社への転職は認めないなど明らかに行き過ぎた競業避止義務を課すことは無効とされますが、ある程度の範囲であれば認められているのが現状です。

ただし、これらは個別のケースごとに判断されており、

  1. 就業規則などによる競業避止規定、特約の有無
  2. 競業避止義務の制限期間の妥当性
  3. 退職者の在職中の地位
  4. 競業避止義務に対する代替措置の有無 etc

を総合的に見て判断されますので、一概に競業避止義務は何年までなら課せられるという明確な線引きがない点をご理解いただければと思います。


2. 退職後に起こる問題

退職者がライバル会社に転職したり、ライバル会社を設立すると、「営業秘密の侵害」、「引抜行為」、「顧客簒奪(さんだつ)行為」等の問題が起こるケースがよくあります。

これらも自由競争の原理を逸脱するような不法行為(故意・重大な過失、悪意があった場合など)は損害賠償請求の対象となりますので、それらも知っておかれるとよいでしょう。


あとがき

結局、「退職後にライバル会社に転職することは可能ですか?」と問われれば、「可能」ということにはなります。

ただし、勤務していた会社に対して背信的な行為があった場合には、一定の制限がかかることがあることをご理解いただければと思います。

そして、その判断基準には明確な線引きはなく、個別ケースごとに総合的な判断がなされるということも知っておかれるとよいでしょう…。